更新日: 2018.02.23 12:38
琢磨「インディジャパンに向け課題も見つかった」
September 4 2011, RACE
IZOD IndyCar Series Baltimore Grand Prix
2011年9月4日(日)
決勝
会場:ボルチモア市街地コース
天候:晴れ
気温:30℃
ウィル・パワーが初開催のボルチモアで優勝し、ダリオ・フランキッティに5点差まで迫る
6位まで追い上げた佐藤琢磨は終盤のアクシデントで18位
メリーランド州最大の都市であるボルチモアで初めて開催されたインディカーのストリートレースは、東のロングビーチ・グランプリと早くも呼ぶ人が現れるほどの大盛況となりました。レース・ウイークエンドは好天にも恵まれ、野球とフットボールのスタジアムのあるエリアに設定された全長2.04マイルのコースには本当に大勢のファンが集まり、ハイスピードのインディカー・レースをエンジョイしていました。
ポールポジションからスタートしたウィル・パワー(Team Penske)は、最初のコーナーでグラハム・レイホール(Chip Ganassi Racing)の先行を許しましたが、すぐさまターン3へのブレーキングで抜き返し、トップに戻りました。その後は予選までで見せてきた速さをレースでも保ち、パワーはピットストップを行っている間だけしかトップの座を明け渡すことなくシーズン6勝目へと逃げきる圧勝を飾りました。
2位には14位スタートだったオリオール・セルビア(Newman Haas Racing)が、フルコースコーションを利用した作戦を生かして入賞し、最後列の27番グリッドからスタートしたトニー・カナーン(KV Racing Technology-Lotus)が3位フィニッシュを果たしました。彼もまたセルビアと同様のピットタイミングの巧みさで表彰台へとたどり着きました。パワーは2回のピットストップでゴールしましたが、セルビアとカナーンは一度多い3回ピットストップを行いながら、トップ3フィニッシュを成し遂げました。
その一方でポイントリーダーのダリオ・フランキッティ(Chip Ganassi Racing)は、スタートと同じ4位でのゴールとなりました。パワーと同じく2ストップの正攻法で戦ったのですが、レースを通してのスピードが足りなかったため、2回目のピットストップを終えたところでパワーとの間にセルビアとカナーンに入られてしまったのでした。
これでパワーは2戦続けて優勝。対するフランキッティは2戦続けて4位フィニッシュ。2人のポイント差はいよいよ5点にまで縮まりました。残るレースはインディジャパン(ロードコース)、ケンタッキー(オーバル)、ラスベガス(オーバル)の3戦だけとなっています。
佐藤琢磨(KV Racing Technology-Lotus)は、予選でスピンをしたために28番手スタートとなるはずでしたが、26番グリッドへと2つ繰り上がりました。決勝日の朝のウオームアップでアクシデントを起こしたカナーンとエリオ・カストロネベス(Team Penske)がスペアカーに乗り換えたために、27、28番グリッドからスタートすることとなったからです。
佐藤はカナーンとは異なる作戦でポジションを着々と上げ、多重アクシデントに巻き込まれたこともありながら、レース終盤には6位までばん回していました。しかし、ゴール目前になって壁に接触してサスペンションを壊し、最後はステアリングが切れなくなってしまったためにコース上にストップ。結果は18位フィニッシュとなりました。
コメント
ウィル・パワー(優勝)
「スタートから激しいバトルになりました。レース中盤には、まるで予選アタックのように全力で10周以上も走り続けたこともありました。その結果、ピットタイミングをずらしたチームよりもポジションを前に保つことができました。自分では5位ぐらいでレースに復帰することも考えていましたが、気づけばトップに戻っていました。今日の勝利は自分のキャリアでも最高のものだったと感じています。ウイニングラップでは満員のスタンドから歓声を受け、表彰式にも大勢の人々が集まってくれていました。ボルチモアのレースは体力的にも厳しいものですが、これこそがインディカー・レースのあるべき姿です。全力を出しきり、ハイスピードで走り続けなければ勝利を手にすることはできないのです」
オリオール・セルビア(2位)
「ボルチモアのオリオールズの翼が今日はオリオール・セルビアについていたということでしょう。Newman Haas Racingは今までに100勝以上を挙げてきています。それには理由があるのです。昨年はチームにとって厳しいシーズンでしたが、今シーズンは力を取り戻しています。こうしてポイントスタンディングでは4位につけ、毎レースでトップ3争いに絡んでいます。今日のチームの作戦はまさに完ぺきでした。すぐ背後を走っていたトニー・カナーンは私と同じタイミングでピットインをしていましたから、燃費の面からも抜かれる心配はしていませんでした。残るシーズンも今日のように上位陣で戦うことができると信じています」
トニー・カナーン(3位)
「朝のファイナルプラクティスでブレーキトラブルによりクラッシュし、E.J.ヴィソのバックアップカーで出場することになりました。スタートまで時間があまりなく、チームのクルーたちは二度とトラブルを出さないよう慎重にマシンを整備する必要がありました。そのために人手が足りていない面もあり、私はシートベルト装着などを手伝いました。今日のレースはマシンを交換したことで最後列27番グリッドからのスタートとなりましたが、絶対にあきらめない気持ちで戦っていました。もし作戦で失敗しても、27番手スタートが28位に下がるだけですから、序盤に上位陣とピットタイミングをずらす策をトライしました。その後のレース中盤からチームが採用した作戦もよかったことで、私たちはこうして3位フィニッシュができました」
佐藤琢磨(18位)
「朝のウオームアップでアクシデントが多かったため、決勝用のセッティングを確認することができませんでした。プラクティス2回と予選の第1セグメントでの走行データだけから決勝を走るマシンを作らなければならなかったので、とても難しかったですね。そうした状況を考えればマシンはかなりうまく仕上げられていたと思います。レースは作戦もよく6位までポジションを上げたのですが、接触でサスペンションを曲げてしまい、それが徐々に悪化していった結果、最後はステアリングが切れなくなってしまいました。ゴールまで走り続けることができず残念です。今回のレースではオーバーテイクを重ね、追い上げる戦いをレース後半に実現できていました。次のインディジャパンに向けての課題も見つかりましたので、万全の準備をして日本に帰りたいと思います」
エリック・バークマン | HPD社長
「ウィル・パワーだけが一段飛び抜けた速さで突っ走りきりましたね。彼は最大のポイント獲得を目指し、それを今回も実現してみせました。自分だけの世界を築き上げているドライバーが、自ら掲げた目標を完ぺきに達成してみせるのを目の当たりにし、とても感激しました。ランキングトップ2人のポイント差はまた縮まりました。残るは3レース、まだまだ激しい戦いが続きますね。
最後列から表彰台に上る3位にまで駆け上がったトニー・カナーンとKV Racing Technology-Lotusの戦いぶりも見事でした。
週末を通して天候に恵まれ、グランドスタンドは満員でした。今日集まってくれたファンは、インディカーのレースを存分に堪能してくれたことでしょう。すばらしいレイバー・デイ・ウイークエンドとなっていたと思います。
次のレースは日本です。春に震災に見舞われた日本でインディカーのレースを行えることを楽しみにしています。多くの人々にレースを楽しんでもらえたらと思います。きっとボルチモアと同じようにすばらしいイベントとなるでしょう。今回が日本での最後のレースになることは非常に残念ですが、もてぎのロードコースでインディカー・レースが開催されるのは初めてです。どんな戦いになるのか、非常に楽しみです」