7月に行われたスパ24時間レースにおいて、地元ベルギーの強豪であるマルクVDSレーシングチームがBMW Z4 GT3で悲願の総合優勝を叶え、BMWモータースポーツはZ4 GT3の引退前の大きなレースを有終の美で飾ることとなった。そんな決勝を控えたスパ24時間の土曜日に、BMWモータースポーツのイエンス・マルカルト代表を囲む記者懇談会が行われ、次期FIA-GT3車両となるBMW M6 GT3の活動についても積極的な質疑応答が行われた。

 ヨーロッパのFIA-GT3界では、ベントレーの車両開発とレース活動を請け負うMスポーツのように完全にワークス体制としての参戦するチームもあれば、純粋にアマチュアとしてレース活動をするチームもあり、実に幅広いチームがこのカテゴリーを戦っている。メルセデスAMGは「ワークス参戦をするのは開発テスト期間のみ」と表明している一方、アウディ陣営では全ドライバーをワークスドライバーで固めているチームもあるなど、メーカーワークスの方針も様々で、2016年からZ4 GT3に替えてM6 GT3を導入する予定のBMWの活動の方向性にも注目が集まっている。

 そんな中、マルカルト代表はスパの懇親会で「あくまでもGT3は“カスタマースポーツ”であり、全チームがGT3マシンを購入して独自にレース活動をする”カスタマーチーム”としての位置付けをしている。その中で特定のチームを特別に扱うということは、現在も今後もない」と強調。来年からのM6の活動もその意識は変わらない事を明言した。

 現に、BMWモータースポーツのGT3活動においては、チームがワークスドライバーをレンタルで起用する場合でも、必ずチームが契約する“プライベートドライバー”と混合の形でラインナップされている。今後も、カスタマーチームがワークスドライバーのレンタルを希望する場合は、スケジュールに合わせて対処していくという。

 なおマルカルト代表によると、M6の初レースとなるのは、2016年1月14〜16日に開催されるドバイ24時間レースになるとのこと。続いて、デイトナ24時間レースへの参戦も予定しているということだ。デイトナ24時間をシリーズの一戦として組み込むユナイテッド・スポーツカー・チャンピオンシップ(USCC)には現在、GTLMクラスにZ4 GTEが参戦しているほか、今季は試験的にZ4 GT3もGTDクラスに参戦している。来季には、USCCへ参戦するチームにもM6 GT3の販売を予定しており、欧州仕様とは若干仕様が異なるアメリカ専用のM6 GT3を開発している事もマルカルト代表は示唆した。

 ちなみに、BMW M6 GT3の開発はミュンヘンのBMWモータースポーツで行われているが、近郊にガレージを構えるDTMチームのMTEKとマルクVDSも開発プロジェクトのテストやサポート業務を担っている。現在は、9月にフランスで行われるFIAのBoP(バランス オブ パフォーマンス)に向けて開発の最終段階に入り、テストを繰り返している状況だ。

 16年度には、FIA-GT3車両のレギュレーションが改正されるため多くのメーカーが新型車両を投入予定となっており、今年9月のFIAテストで無事に認証を受けることができれば、16年から晴れてレビューとなる。そのため、9月のテストには来年デビューを予定している新FIA-GT3車両が揃うこととなり、実に華々しい走行となるだろう。

 なお、M6 GT3の最初のデリバリーはマルクVDS、ターナー・モータースポーツ、チーム・ブラジルの3チームであることもスパで発表されており、その他のカスタマーチームについてもオーダーに応じて順次製作を行っていく。また、9月に開催されるフランクフルトモーターショーの会場では、フェイスリフトなしの姿が初お披露目となる予定だ。ちなみに、M6 GT3の車両本体販売価格は3万7900ユーロ(税抜)で、日本円に換算すると約5230万円となる。

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