話題の新カテゴリー、FIA-F4選手権レースはシリーズ第3戦、第4戦の舞台を富士スピードウェイに移し、ゴールデンウィーク真っ最中の5月2~3日に、2日間合計9万人を超える大観衆が見守る中で開催された。ポールポジションは2戦とも牧野任祐(DODIE・インプローブス・RN-S)が獲得する。しかし、第3戦では逃げ切りを許されず、坪井翔(FTRSスカラシップF4)に連勝を阻止された一方で、第4戦では後続に混乱が続く中、ひとり安定した走りで3勝目をマークすることとなった。
第3戦、第4戦の練習走行は木曜日と金曜日に2セッションずつ行われ、金曜日の最終セッションこそ路面温度の急上昇によって、全体的にタイムは伸び悩んだものの、それまではセッションごとタイムが縮まっていった。その3セッションすべてでトップだったのは坪井。まずは1分45秒507をターゲットとし、牧野任祐(DODIE・インプローブスRN-S)をコンマ02秒差で従えていた。
「前回は(牧野に)すっかりやられてしまいましたが、今回はここまでいい流れで来ているという自覚はあります。今回は僕が2連勝で、やり返して見せますよ!」と坪井。45秒台には、他にも平木湧也(GSR初音ミクホリデー車検F110)と川端伸太朗(SUCCEED SPORTS F110)が入れ、また川端は最終セッションのトップタイムを記録していた。
今回も予選は1セッションのみ行われ、ファーストベストタイムが第3戦の、そしてセカンドベストタイムが第4戦のグリッドの決定要素に。序盤のトップは目まぐるしく変わる中、最初に1分45秒台に入れたのは山田真之亮(B-MAX RACING F110)だったが、それで簡単に決着がつこうはずがなく……。代わって三笠雄一が45秒604を記して逆転するも、続いて坪井が45秒569、45秒531と立て続けに好タイムを出し、待望のトップへと躍り出る。
しかし、それを牧野が黙って見過ごすはずもなく、間もなく45秒337を記してトップに浮上。最後に三笠も、坪井のタイムを上回る45秒505をマークして、2番手に。坪井に続く4番手は山田で、5番手は大津弘樹(HFDP/SRS-F/コチラレーシング)、6番手は根本悠生(GUNZE F110 KCMG)が獲得。
セカンドベストタイムでも牧野は45秒355でトップ。その結果、Wポールが決定し、第4戦は坪井、三笠、大津、山田、そして篠原拓朗(VSR Lamborghini SC)の順で続くこととなった。「最初の10分ぐらい、ピットで待っていようかと思ったんですが、とりあえずダラダラ走って、タイヤを温め過ぎず、程よい温度にはしておいて、いい場所に出られたらアタックしようと思っていて、それがうまくいった感じです。ただ、決勝はスリップストリームが使えるので、ここでは逃げられないでしょう。もともと富士はあんまり好きじゃないので、ここを鬼門と考え、うまく切り抜けられたら、あとはもう大丈夫だと思うことにしています」と牧野。
「まだセクター2が今イチの状態で、この差、このポジションなので、今回は十分勝負権ありだと思っています。もちろん、いつまでも今イチじゃマズいので、レースの中で修正していきたいと思います」と語るのは三笠。そして「岡山では勝負させてもらえないほどの嵯峨ありましたが、今回はそうじゃないんで」と坪井も、「打倒・牧野」に闘志を燃やすとともに、誰も逃げ切れない激しいスリップストリーム合戦を予想していた。
第3戦のスタートを誰より鋭く決めたのは三笠ながら、離れず続いた牧野は2周目の1コーナーで逆転に成功。逆に「リヤが不安定で」という三笠は、ペースが上がらず、その周だけで山田、大津の先行を許し、3周目には坪井にもかわされてしまう。その後、大津こそ抜き返したものの、9周目のダンロップコーナーでスピンを喫し、戦列を離れることに。一方、牧野も逃げ切りを許されず、8周目に坪井が山田をかわして2番手に浮上すると、さらに差は縮まっていく。勢いに乗る坪井は9周目には勝負をかけて、プリウスコーナーでトップに浮上!
ただし、牧野も諦めることなく、スリップストリームから抜け出せないと判断すると、14周目のダンロップコーナーで坪井のインを突く。だが、坪井もこれを冷静に対処。完璧すぎるほどのガードで逆転を許さず。その間に再び山田も追いついて、最後は完全な団子状態とするも、順位は動かず。その結果、3戦目にして坪井が牧野に土をつけることとなった。
「スタートは良くなくて、いったん5番手まで下がっちゃったんですが、ペースは悪くなかったのでついていけて、その後は冷静に抜き続けることができました。牧野を直線で抜いても良かったんですが、行けるところで行ってしまおうと。やっとすっきりしました、ホームコースでやっつけることができましたから。インフィールドは僕の方が速かったのと、ここで来るだろうと、ちゃんと予想できて、しっかり対応できたのが大きかったですね」と坪井。「逃げ切るだけの余裕はなくて、次のレースにタイヤを使いきることはしたくなかったし、明らかにペースが違っていました」と、レース後しばらくしてからは冷静に語っていた牧野ながら、表彰式では悔しさをにじみ出していたのが印象的だった。
明けて日曜日の第4戦では、牧野が絶妙のスタートを切る。三笠が坪井をかわすも、牧野を脅かすまでには至らず。真っ先に1コーナーを駆け抜けていったことが、牧野にとって勝因のひとつともなった。というのも、GTが走り続けたことで路面状態は大幅に変化し、極めて滑りやすくなっていたからだ。いたるところでスピンやコースアウトが相次ぎ、なんと坪井までもが後続車両に追突され、ヘアピンで止まってしまったのだ。
幸い、再び追突されることはなく戦列に復帰はしたものの、坪井は大きく順位を落とす。「落ち着いてミラーを見たら、三笠選手しかいなくてビックリしました。坪井選手を始め、誰に何が起きたのか全然分かりませんでした」と牧野が語るほどの状態になり、このふたりから大きく遅れて、山田が3番手に浮上。そして、「逃げたかったけど、逃げるほどの余裕はありませんでした」とは言いつつも、しっかりタイムを刻んで走り続けた牧野が、1日で逆襲を果たして3勝目をマークした。「夕べはぐっすり眠れました、ほとんどふて寝で、9時ぐらいに(笑)。朝はもうすっきりしていました」という、切り替えの速さも強さの秘訣なのかもしれない。
2位は三笠で、初の表彰台を獲得。3位は山田で連続表彰台へ。一方、坪井はほぼ最後尾から激しい追い上げを見せるが、8位でゴールするのが精いっぱい。それでもファステストラップは樹立して、意地は見せていた。