レース1のリザルトを元にレース2のスターティンググリッドを決めるGP2では、レース1でリタイアしたり下位に沈んでしまうともう上位争いへの挽回は極めて難しくなる。コース上でのオーバーテイクが困難なモナコではその傾向がなおさら強くなる。
15番グリッドからレース2に臨んだ佐藤公哉は、スタートで2つポジションを落とした。その後は4位から13台が連なる大渋滞の中で、一度も追い抜きのチャンスに恵まれることなくレースを終えなければならなかった。
「苦しいレースでした……ずっとARTのマシンのテールを見てばかりのレースで、もう全然抜けなかったですね。ペースが良くてもここではダメです」
カンポスレーシングはチームメイトのアルトゥール・ピックと2人揃ってスタートでポジションを落としている。そこが最大の課題だと佐藤は語る。
「パドルでクラッチをつなぐが上手くいかないんです。いつも調整しようとしているんですけど、熱でクラッチが膨張して状態が変わるので、さっきは最高のつながり方だと思っても、次には全然繋がってこなかったりするんです。スタートをなんとかするというのが今の一番の課題です。これからバレンシアのファクトリーに戻って、チームと上手く対応していかないといけません」
一方、伊沢拓也はスタートで4つポジションを上げて16位に浮上したものの、ブレーキペダルにトラブルが生じて徐々にペースが下がってきた。そして13周目にいよいよ症状が酷くなったためピットに戻ってレースを諦めなければならなかった。
「ブレーキは効くんですけど、どんどんペダルが奥に入っていってしまう状態で、それが普通の量じゃなくなっちゃったんです。ピットとやりとりをしながら1回前との間隔を空けてブレーキを冷やしてみたりもしたんですけど、そういうことじゃなさそうで」
エスケープゾーンがほとんどないモナコだからこそ、万一の場合を考えてこういう措置を執らざるを得なかったと伊沢は語る。
「他のサーキットだったらもう少し粘れたのかもしれないけど、(エスケープゾーンの少ない)ここじゃちょっと危ないですからね……」
ペースとしては4位から連なる集団の中で充分に前走車についていけるだけのものがあっただけに、悔いが残る。
そもそもは不慣れな市街地サーキットでの予選で下位グリッドに沈んだこと、そしてレース1でクラッシュを喫したことでこのモナコの週末全体を棒に振ることになった。伊沢は少しずつ自分の中でこのGP2のマシンとタイヤを学んで前進していっているとも言うが、結果が全てだという開幕以来のスタンスを変えていない。
「今の状況だと、遅いと思われてもしょうがない。自分自身でも自分に期待してるし、それを結果に結びつけられないというのは悔しいし、言葉にできないような思いでいます。でも自分が今どういう状況にあって少しずつ前進してますって説明したところで、それが結果に繋がっていなければそれは言い訳にしかならないから。だから、そうならないように結果を出すしかないと思っています」
そういう意味では、ルーキーの2人にとってモナコはあまりに特殊で、開幕2ラウンドで学んだことを結果に結びつけるのには適した場所ではなかった。GP2の世界に飛び込んだ2人の日本人ドライバーたちがいかに成長してきたか、それがより明確に表われる舞台は1カ月後のレッドブルリンクになる。