14車種29チームが熾烈なバトルを繰り広げた2015年シーズンのスーパーGT300クラス。数多くある車両のなかから1台ピックアップし、ドライバーや関係者にマシンの魅力を聞いていく。

 今回はアンドレ・クートと千代勝正、富田竜一郎擁するGAINERに最終戦を待たずしてタイトルをもたらしたニッサンGT-RニスモGT3にフォーカス。

* * * * *

 ニッサンGT-RニスモGT3は2012年にデビューした日本初のFIA-GT3規定マシン。スーパーGTでは参戦初年度の12年シーズン第4戦SUGOで初優勝(S Road NDDP GT-R)を飾っている。また、ヨーロッパのブランパン耐久シリーズやADAC GTシリーズにも参戦している。

 昨年までのマシン特徴は“直線番長”と呼ばれるほどストレートスピードが速かったこと。ほかのFIA-GT3マシンと比べてもストレートスピードが圧倒的に速く、予選で上位につけることが多かった。しかし、車重が重く、重心位置も高いため、タイヤやブレーキへの負担が強くロングランで苦戦。決勝で思うようなレース運びをすることができずにいた。

 来季に新型GT3を投入することもあり、ライバルメーカーが今季のアップデートを見送るなか、ニスモは2015年シーズンに向けて軽量化や重量バランスの見直し、ブレーキローターのサイズ拡大など、大幅なアップデートを投入した。GAINERのGT300クラスタイトルに貢献し、ブランパン耐久シリーズでもチャンピオンを獲得した千代勝正は「今季1番良くなったのはブレーキ」と明かす。このブレーキ性能は、一部ではメルセデスSLSをも上回る能力があると言われている。

「ブレーキは性能も良くなりましたし、クーリングも改善されて、耐久レースでもすごく保つようになりました。ブレーキはライバルに対する今年1番の武器になっていますね」

「また、クルマの重量配分がすごく良くなって、特にリヤタイヤへの攻撃性が弱くなりました。タイヤを保たせることができるようになったので、ロング(ラン)でも強いクルマになったと思います」

 しかし、これまでの武器であったストレートスピードは、性能調整(BoP)によって毎戦のようにブースト圧が引き下げられたことで低下。最終戦もてぎではB-MAX NDDP GT-Rの星野一樹が「もうストレートが速いマシンではなくなっている」と洩らすほどだった。ただ、ブースト圧の低下が大きかったシリーズ後半でも、GT-Rは強さをみせたことから、今年施されたアップデートが効果を発揮しているのは間違いないだろう。

 また、千代はブランパン耐久にて来季本格的なデビューを果たすアウディの新型R8 GT3やランボルギーニとのレースを経験しているが、GT-Rにはこれら新型GT3に負けない戦闘力を有していると感じているという。

「すごく速くて手強いなと感じましたが、GT-Rの完成度も高いです。GT-Rはかなり戦闘力のあるクルマで、同じレベルで戦えている実感がありました」

* * * * *

 今年、ここまでGT-Rが圧倒的だった要因のひとつに、SROが策定するGT3マシンの性能調整に若干のアンバランスがあったことは否めない。しかし、そのアンバランスが修正されてきたシーズン後半でもGT-Rは強さをみせており、マシン自体のポテンシャルが極めて高いこともまた事実だ。

 来季は各メーカーが軒並み新たな新型GT3マシンを投入を予定しており、これら新型マシンは王者GT-Rに戦いを挑んでくる。また、今年の活躍を見てニッサンGT-Rへスイッチするチームが出てくる可能性も高そうだ。2016年シーズンはGT-Rの真価が試されるシーズンとなりそうだ。

本日のレースクイーン

七星じゅりあななほしじゅりあ
2025年 / オートサロン
尾林ファクトリー/東京オートサロン2025
  • auto sport ch by autosport web

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    RA272とMP4/5の生音はマニア垂涎。ホンダF1オートサロン特別イベントの舞台裏に完全密着

    もっと見る
  • auto sport

    auto sport 2025年4月号 No.1606

    [検証]F1史上最大の番狂わせ
    ハミルトン×フェラーリ
    成功の確率

    詳細を見る