NASCARの最高峰カテゴリーとなるスプリントカップ・シリーズにチップ・ガナッシから参戦している若手ドライバーのカイル・ラーソンが来日。シリーズの雰囲気や、一体どれほどの収入を得ているのかなど、普段はなかなか知ることのできないNASCARの“内部事情”を聞いた。
NASCARといえば、北米ではMLBやNBAなどと匹敵するほどのメジャースポーツ。特に、シリーズ最高峰のスプリントカップは年間36戦という超過密スケジュールで開催されるほどの人気カテゴリーだ。
今回来日したラーソンは、現在23歳。21歳の時にスプリントカップにスポット参戦すると、22歳にして名門チップ・ガナッシからフル参戦。ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得する活躍を見せ、引き続き今季もチップ・ガナッシでシリーズを戦ったNASCAR若手のホープだ。
ちなみにラーソンは日系4世で、日系人初のNASCARドライバーでもある。ただし、日本に来るのは実は今回が初めてとのこと。都内のホテルに滞在していたラーソンは、NASCARドライバーと聞いて想像する屈強なイメージよりも小柄で、目が少年のようにキラキラと光る好青年だった。
ところでNASCARといえば、接触、クラッシュ、乱闘と、そこまで含めてエンターテインメントとして成立しているイメージがある。ラーソンへの印象とは異なるが、やはり参戦ドライバーたちには“荒くれ者”が多いのだろうか?
「乱闘のほとんどはチェイス(※シリーズ終盤10戦でのプレーオフ)で起きているんだ。チャンピオン争いをしている上、ポイントがリセットされるからね。ドライバーにはとてもストレスがかかる状況だ。それ以外の場面では、どのドライバーも紳士的だよ」
とは言え、ラーソン自身もレースの中ではヒートアップしてしまうことはあるのではないかと聞いてみると、「僕は常に落ち着いてリラックスしているから、頭に血がのぼることはほとんどない」とあっさり。
「ドライバーのなかにはレース前に音楽を聞いて気持ちを高める人もいるけど、僕はできるだけリラックスするように心がけているんだ」
“血の気が多い”というイメージは払拭されてしまったが、メジャースポーツのひとつとなるNASCARのドライバーといえば、アメリカではビッグスターでもある。ラーソンの来日にあたって帯同していた関係者からも、ラーソンの人気は高いと聞いた。そんな“スター”は、年間で一体どれほどのサラリーを得ているのか?
「レース毎に賞金は異なるし、チームによっても給料は違うから一概には言えないね。ただ、デイトナ500で優勝すれば約150万ドル(約1.8億円)の賞金がもらえる。それに加えて、もしチャンピオンになるとシリーズから賞金も出るんだ。ただ、金額は毎年変わるんだけどね」とラーソン。せっかくの機会なのでさらに踏み込んで聞いてみると、予想外の回答が返ってきた。
「実は、僕も自分がどれだけ稼いでいるのか、把握してないんだ(笑)。ただ、スプリントカップに参戦するドライバーのなかでは少ないほうだと思うよ」
ゆるい質問にも笑顔で応対してくれたラーソンだが、「NASCAR史上初の日系アメリカ人として、少しでも多くの日本人が僕のファンになってくれてNASCARに注目してくれるように頑張りたい」とも話しており、将来的には日本と北米のモータースポーツをより深くつなぐきっかけにもなるかもしれない。
スプリントカップでのこれまでの最高位は2位となっており、優勝こそまだないが、来季に向けては「まずは勝利することが目標だ」と意気込みを見せる。その上で、チェイスに進んでチャンピオンを目指すため、次のように気を引き締めた。
「チームにはチェイスに進んでチャンピオン争いを勝ち抜くための能力があると思う。だから、スタッフと協力しながら、毎戦集中を切らさずミスをしないようにしなくてはいけないね!」
次世代のNASCAR界を担っていく若手としても期待されるラーソンが、NASCARへの思いや自身のキャリア、今後の展望などを語ったインタビューは、12月25日(金)発売の『auto sport No.1422』に掲載。ぜひこちらもチェックを。