国内トップフォーミュラである、全日本選手権スーパーフォーミュラ。今季、ダラーラ製のSF14シャシーが導入され、環境技術を意識した通称"NRE"規定の2リッター直4直噴ターボエンジンを搭載。大きくシリーズが生まれ変わったが、この新シャシーに多くのドライバーが絶賛の声を送っている。

 このSF14シャシーは、『クイック&ライト』をコンセプトにフォーミュラカーらしい動き、レースでのバトル増加などを目指し、イタリアのダラーラ・アウトモビリが開発。トヨタ、ホンダのターボエンジンが搭載され、コンセプトどおり最低重量は660kgと軽量。ブレンボ製カーボンブレーキが採用されたほか、2010年のF1安全基準を満たす高い安全性を備えている。

■走り出しからドライバーたちが絶賛
 そんなSF14シャシーだが、各チームにデリバリーされテストが行われてから、多くのドライバーから絶賛の声が多い。特に鈴鹿ではF1と比較できることから、元F1ドライバーに聞くと「コーナーではF1よりも速い」という声が多く聞かれていた。

「走っていてとても楽しいクルマだよ。このSF14はF1以外では最も速いフォーミュラだと思うし、一部のF1マシンはもう凌駕していると思う」と語るのは、今季から再び日本で戦うナレイン・カーティケヤン(LENOVO TEAM IMPUL)。また、多くのF1マシンをドライブしてきたビタントニオ・リウッツィ(HP REAL RACING)も「僕は昨年のSF13に乗っていないから分からないけど、ダラーラは本当にすごい仕事をしたと思う。非常に速いクルマを作ってきたからね」と称賛した。

「初めて鈴鹿でSF14に乗った時には、ブリヂストンタイヤも車両も、非常にグリップが高いと感じたし、エンジンも素晴らしかった。F1と同じくらいのスピードをもったフォーミュラカーだし、鈴鹿に関して言えば、F1よりも速いコーナーがいくつかある。ストレートではF1よりもパワーが少ないからタイムはそこまで速くはないけどね」とリウッツィ。

「それに、とても競争が激しいシリーズだと思う。ヨーロッパ、そして日本からレベルが高いドライバーが集まっている。とても興味深いシリーズだし、チャレンジングだよ」

■バトルのしやすさは特筆もの
 第1戦鈴鹿の予選、決勝レースと終えてみると、その称賛の声はますます高まった。そのクイックさはコースサイドで肉眼でも感じることができ、デグナーではあるプロカメラマンが「長年フォーミュラを撮影しているが、あのコーナリングの迫力は初めてに近い」と語った。また、レースでは昨年を大きく上回るオーバーテイクが見られ、開幕戦に詰めかけた2万8000人のファンを魅了した。

 レース後の興奮冷めやらぬ中、表彰台と記者会見の2回に渡り、ダラーラへの称賛を口にしたのは、優勝したロイック・デュバル(KYGNUS SUNOCO)だ。「トヨタ、ダラーラのおかげで、素晴らしい開幕を迎えることができた。とても楽しいレースだと思うよ」とWEC世界耐久選手権王者のデュバル。

 また、2位に入った元フォース・インディアF1テストドライバーのジェームス・ロシター(KONDO RACING)も「オーバーテイクもしやすくて、ドライブも本当に楽しかった。ダラーラにはお礼を言わないといけないね。それに、ブリヂストンタイヤもサイド・バイ・サイドで戦っている時のグリップが良くて感謝している」と語った。

 実際、昨年のSF13では乱流によりダウンフォースが急激に失われているような接近戦の場面でも、SF14はグリップを失わず、テール・トゥ・ノーズを演出。また、今季から採用されたNREエンジンの燃料流量リストリクターを活用したオーバーテイクシステム(OTS)も、レース中は盛んに使用されていた。

「OTSは守りにも使ったし、追い抜きにも使ったよ。SF14は全体的に戦いやすいクルマになっているし、OTSはその助けにもなっている。他のドライバーに聞いても、みんな満足していると言うと思うよ」とロシター。

 また、デュバルは「OTSはいいと思うけど、SF14はスリップストリームがすごく効くんだ。だから、OTSを使わなくてもスリップをうまく使うことができれば十分バトルを仕掛けることができる。昨今のフォーミュラカーレースではこういう状況はなかなかなかったから、こうして楽しめるのは素晴らしいと思うよ」と笑顔で語った。

 まだまだSF14はエンジンをはじめ、スタートに使用するハンドクラッチなど煮詰めが必要な部分も多いと各ドライバーは口にする。ただ、それは裏返せば今後ますます実力が接近していき、ハイレベルな戦いが待っているということだ。今後の開催地である富士、そしてツインリンクもてぎではどんなレースが展開されるのか、期待が高まる。

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