更新日: 2018.02.15 16:00
【BMW Group PressClub Japan】BMWランツフート工場、来年より世界初の排ガス・ゼロの鋳造施設として操業
BMWランツフート工場、来年より世界初の排ガス・ゼロの鋳造施設として操業。環境に配慮した軽合金鋳造技術が部品製造に反映される。
ランツフート / ミュンヘン 発:BMWランツフート工場は来年2010年より、世界初の排ガス・ゼロの砂中子(すな・なかご)を用いた鋳造施設として操業します。ランツフート工場での軽合金製鋳造は砂中子式の製造法ですが、重力ダイカスト製法において、従来の有機バインダー(粘結剤)の代わりに、実質的に有害ガスがまったく発生しない、環境に配慮した無機バインダーを採用します。この画期的な新製法の導入により、軽合金鋳物の製造過程で発生する排出ガスを98%削減できます。これにともない、ランツフート工場は現在使用している排ガス処理システムを2010年までに完全廃止する予定です。
現在約1,300人の従業員を擁するランツフート工場は、約4万5000トンのアルミニウムとマグネシウム製品を、年間およそ180万個鋳造しています。ここで生産される製品には、シリンダー・ヘッドやクランク・ケースなどのエンジン・コンポーネント、ボディ部品、及びサスペンジョン・ストラット・サポート、テールゲートのフレーム、サスペンジョンの主要部材などのシャーシ部品が含まれます。
BMWグループの鋳造製品の約半分は砂中子式の重力ダイカスティングで製造されています。砂中子式軽合金鋳造では毎日、約120トンの砂を使用しますが、そのうちの90%は再利用されています。試験的な導入段階を経た後、この無機バインダーを用いた鋳造技術でもって、BMWグループは、全エンジン・コンポーネントの量産を可能にする世界初の自動車メーカーとなる準備を進めています。無機バインダーは水溶性アルカリケイ酸をベースとしているので、資源消費の大幅な削減につながりました。
ランツフート工場における軽合金鋳造の責任者、ヴォルフガング・ブリュームフーバーは次のように述べています。「無機砂中子式の鋳造製法の技術により、BMWグループは環境に優しい鋳造技術を誇るメーカーとなりました。」 さらに彼はこう続けています。「無機砂中子式鋳造製法は、環境に関する規制が厳しく、かつ、生産コストも割高な工業先進国にとっては、今後特に重要視され、競争力の鍵となる製法です。」
当初、ランツフート工場では、この排ガス・ゼロの軽合金鋳造製法をアルミ・クランクケースや6気筒ディーゼル・エンジンのシリンダー・ヘッドの生産に導入してきましたが、現在ではBMWグループの鋳造製品すべてにおいて採用される技術となりつつあります。
さらにこの鋳造法は環境面のみならず、コスト面と労働力の側面においても、大きな利点があります。鋳込みの過程で、溶融アルミニウムは約750度の状態から、より素早く冷却され、凝固が可能となったので、軽合金製コンポーネントの強度も改善されました。BMWグループは、このような技術を利用しながら、より良い燃費でよりパワフルなエンジン—つまり、シリンダ内最大燃焼圧力の高い、高出力が得られる特性を備えたエンジン—のように、軽量でありながら頑丈な構造の部材を製造しています。
また、ランツフート工場の従業員にとっても、労働力において大幅な効率化を図ることができました。従来は、中子バインダー燃焼後、発生した排ガスを除去するために、毎回使用後には鋳込み機材にドライアイスを噴射する必要がありましたが、新製法のおかげで、この手間を省くことができます。
無機砂中子式鋳造製法の導入にともない、鋳造機材と工場内の設備面も改善されました。従来必要とされた空調設備が不要となったので、鋳造設備はより簡素化されました。さらに、鋳込みの際、冷却プロセスが改善されたので、製造サイクルに要した時間が約10%短縮できました。製造過程や機材の開発で採用されたこのようなシミュレーション技術も、ランツフート工場で開発されたものです。
前出の同工場責任者、ブリュームフーバーは以下のように述べています。「生産性の向上に加えて、機材の維持費、機材と設備の後処理費用や排ガス処理システムの費用といった諸々のコストが削減できたおかげで、今回の技術開発費、機材および設備投資は数年間のうちに完全に償却できる予定です。」
とりわけ、生産性は10%近くも向上し、また、設備維持費は半分に削減できる見込みです。