リライアント・パークに特設されたコースを使用してダブルヘッダーで開催されているIZODインディカー・シリーズのヒューストン戦。5日に開催された第17戦の決勝レースは、チャンピオンを争うスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)が勝利。ポールポジションからスタートした佐藤琢磨(AJフォイト)は、不運に見舞われリタイアに終わった。
キャリア3回目のポールポジションのスタートから佐藤琢磨はトップを守った。ところが、スタート直後にアクシデントが発生。スタンディングスタートで6番グリッドのジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポート)がエンジンをストールし、最後列スタートのエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)が避け切れずにクラッシュ。このアクシデントで散らばったマシンの破片を踏んだためか、琢磨は右リヤタイヤがスローパンクチャーを起こし、止む無くピットイン。レース開始早々にして12番手まで順位を下げた。
これでトップは予選2番手だったウィル・パワー(チーム・ペンスキー)のものとなり、2番手にはディクソンが浮上した。序盤のトップ争いはこの二人によって繰り広げられた。後方を走るディクソンの方が速いように見えたが、コース上での順位の逆転は起こらなかった。
ディクソンは36周目にピットイン。タイヤをブラックに換えてコースに復帰した。続く37周目にパワーはピットイン。ここでジャッキアップの時間が僅かに長くかかり、パワーはディクソンの後ろにピットアウトした。
まんまとトップに躍り出たディクソンは、リードを一気に広げて周回を重ねていった。彼が2回目のピットストップに向ったのは64周目のこと。そして、ここで珍しくディクソンに幸運が訪れる。ピットで作業を受けている間にオリオール・セルビア(パンサー・レーシング)がスピンしてストップ。4回目のフルコースコーションが出されたのだ。これはディクソンにとって絶妙のタイミングだった。彼はイエロー中にライバル勢がピットに入れば、難なくトップを守れることとなったのだ。
68周目、コーション中にピットがオープンになったが、ここでチーム・ペンスキーが不可思議な作戦に出た。パワーをピットに呼び入れなかったのだ。残り周回数を考えれば給油なしで走り切るのは不可能と見えていたが、同じく理解し難い作戦に出たルカ・フィリッピ(ブライアン・ハータ)ともどもステイアウトした。
この作戦が成功しないことは、両チームともすぐさま理解した。琢磨がクラッシュして出された73周目からのフルコースコーションでパワー、フィリッピはピットイン。彼らは1、2位から11、13位へとそれぞれ順位を落とした。最終的にパワーは12位でゴール。フィリッピは初表彰台のチャンスを逃したが、レース終盤にも頑張りをみせて10位でゴールした。
パワーという追っ手がいなくなってディクソンのレースは一気に楽になり、今季4勝目へ悠々と逃げ切った。マイク・コンウェイ(デイル・コイン)がゴール目前でアクシデントを起こしたことにより、イエローのままゴールは迎えられた。
2位でフィニッシュしたのはシモーナ・デ・シルベストロ(KVレーシング・テクノロジー)だった。ついに彼女は表彰台へと手を届かせた。レース終盤、デ・シルベストロはサイモン・ペジナウ(シュミット・ハミルトン)をパスして表彰台フィニッシュへと大きく前進。その後はジャスティン・ウィルソン(デイル・コイン・レーシング)の追撃を振り切ってみせた。
ウィルソンは3位で、今季4回目の表彰台フィニッシュを達成した。4位はペジナウ。そして5位には前戦ボルティモアで自己ベストの2位フィニッシュをしたばかりのジョセフ・ニューガーデン(サラ・フィッシャー・ハートマン)が入った。
ストリートレースでの奮闘が今年は目立っているジェイムズ・ジェイクス(レイホール・レターマン・ラニガン)が6位、彼のチームメイトのグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が7位だった。ホンダ勢が活躍し、トップ7位までの6人がホンダドライバーだった。
ポイントリーダーのエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は予選22番手、21番グリッドからのスタートだったが、序盤にしてギヤボックストラブルに見舞われ、18位フィニッシュ。ポイント2位のディクソンが優勝したため、49点もあったポイントリードは一気に8点にまで縮まった。
今日の勝利はホンダにとっての今季9勝目。8勝のシボレーをついに上回り、マニュファクチャラーポイントで初めてトップに立った。アイオワでの第10戦終了時点では7勝3敗だったが、シーズン終盤になって大逆転を成し遂げた。明日の第18戦でホンダが優勝すればマニュファクチャラータイトルは彼らのものとなる。明日シボレー勢が勝てば、マニュファクチャラー間のタイトル争いも最終戦までもつれ込むこととなる。