ロータスF1チームで昨年、ロマン・グロージャンを担当していたレースエンジニアの小松礼雄氏。今シーズンはチーフエンジニアに昇格してグロージャン、そしてパストール・マルドナドの2台のマシンでF1を戦います。
今季の躍進著しいロータスチーム。上位3つのワークスチームに次いで、4~5番手を争うパフォーマンスを見せていますが、ここ数戦はポイントを獲得するもトラブルやアクシデントが多発してしまい……。現場でエンジニアリングをまとめる小松氏は、どのようにモナコの週末を振り返るのでしょうか。
さらには、ロータスE23とコースレイアウトの相性が良さそうな次戦、カナダGPの展望もお伺いします。
F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム、第8回目の一部をお楽しみください。
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ドライバー優先で考えるモナコの攻め方
ぐるぐる走り続ける予選アタックのセオリー
モナコのレースはパストールのクルマが壊れてポイントが獲れず、逆にザウバー、トロロッソとフォース・インディアがポイントを獲ってしまったので、コンストラクターズポイントでザウバーに離され、トロロッソには1点差に迫られ、フォース・インディアには逆転されてしまいました(1ポイント差でランキング7位に後退)。クルマの信頼性の問題であのような結果になるのは、当たり前ですけど、非常に良くない状況です。細かいことは言えませんがこれも資金不足と無関係ではありません。
クルマのパフォーマンスとしては、パストール(マルドナド)は少なくとも8位でフィニッシュできる速さがあったと思います。ロマン(グロージャン)も速さの面では、パストールに近いものがありましたが、バルセロナでのギヤボックスの問題で5グリッド降格があったので、その時点でポイント圏内での完走は厳しい目標でした。
実際のレースでは一時10位を走っていましたけど、それはパストールを含め、前の人がいなくなったからなので……。モナコは16番グリッドからのスタートでは普通はポイントは獲れません。ロマンはぶつけられる前には10位まで順位を上げたわけですが、今回はあれ以上の結果はないでしょうね。
予選に関しては想定していたよりは良い結果でした。ダウンフォースが不足しているウチのクルマでは、はっきり言ってモナコでポイントを獲るのはすごく大変だろうと思っていました。でも、いざ走り出してみたら、きちんと走ることができればポイントを獲れると感じたので、クルマのパフォーマンス自体は悪くなかったです。
特にパストールは以前からそうですが市街地が得意ですし、ロマンも得意です。ロマンは一昨年、キミ(ライコネン)より全然速かったのですが、今回のパストールは週末通してそのロマンより速かったからすごいですよね。やはり彼は才能があります。ただ、それが1周のタイムだけでなく、レースで必要な300km、ピットストップを含めて続けられるかが課題ですね(苦笑)。
今回のモナコは、例年以上にタイヤがフォーカスされたレースでした。ピレリがモナコにもってくるタイヤは非常に硬いので、予選で通常のように一発のタイムは出ません。イメージ的にはプライム&オプションの組み合わせじゃなくて、スーパープライムとプライムくらいの硬さです(苦笑)。これはバルセロナでも同じでした。モナコは路面のグリップが低く、レイアウト的にもタイヤに熱をちゃんと入れられるコーナーがほとんどありません。それに加え、特にQ1とQ2ではトラフィックが多いので、アタックラップに向けてタイヤを温めるのが本当に難しいです。
タイヤを温めるに必要な周回数はドライバーにもよりますけど、ウチのクルマではだいたい2~3周でした。1~2周ではアタックに行けるかどうか微妙なところです。予選では普通は1周プッシュしたら次の周はクールダウンするわけですが、通常のタイヤはいくらクールダウンしても、一番高いグリップ、タイヤのおいしいところはもう1回は戻ってきません。ですので、そのタイヤのおいしいところを活かすのが通常ですが、この考え方はモナコでは必ずしも当てはまりません。
モナコの予選ではコース上を周回しながら、クルマの競争力にもよりますが、少なくともQ1、Q2ではいつアタックしてもいいような状態にしておくからです。ですので、僕らはガソリンを1セッション分積んで走っていました。普通ならばウォームアップ、アタック、インラップと1アタックで3~5周分のガソリンしか入れないでコースインしますが、今回のモナコでは1回もガレージに戻らないで、タイヤ交換も全部ピットストップで対応しました。
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「雨の予選と似たモナコの予選アプローチ」
「ドライバー優先のセットアップ」
「レッドブルの躍進とウイリアムズの低迷」……etc.