16歳の高校生ドライバー佐藤万璃音(さとう・まりの)は2015年12月中旬に一時帰国、ヴィンチェンツォ・ソスピリ・レーシング(VSR)より16シーズンのFIA-F4イタリアへの継続参戦を発表した直後の16年1月下旬には、チーム本拠地があり彼が寝起きするイタリア中部のフォルリへと早くも旅立った。
約1ヵ月半の日本滞在では、自分の趣味であるイベントに足を運んで楽しみ、またフィジカル・トレーニングを兼ねたカートレースに参戦するなど、束の間のオフシーズンを過ごした万璃音。一方で高校生としての学業も疎かにはしなかった。
1月半ばと時期的に早めの継続参戦を発表できたのは、万璃音のヨーロッパ挑戦が場当たり的な単年度ではなく、腰を据えた複数年度という計画を当初より立てていたからだ。1シーズン目はテストやレースでとことん走り込み、2シーズン目はレースで結果を出す。そうして、3シーズン目以降のヨーロッパでの活動に向けて弾みをつけたいという意志のようだ。
1シーズン目のFIA-F4イタリアで万璃音は2位2回が最高位で、ドライバー・ランキングは参加36人中9位。プレマやミュッケといったトップチーム所属のドライバー陣に独走を許したとはいえ、VSRというチームでルーキーという事情を考慮すれば健闘に値すると言えよう。
なにより、15シーズンの最終大会(ミサノ)レース3は印象的だった。濡れた路面にもかかわらず上位のライバルとは異なるドライ・タイヤを履いて臨む作戦で、一時は先頭から約40秒遅れる最後尾近くまで後退。しかし、路面の改善とともに1周で1、2台を追い抜く快進撃を見せ、最後はトップを視界にとらえる2位でチェッカード・フラッグ。レース直後には走路外走行を問われて25秒加算のペナルティを課され6位に降格したものの、チームの抗議によりシーズン終了後には2位が復活した。
「いまはイタリア・ミサノで4月に開催される開幕大会が待ち遠しくてしかたありません」とチームのリリースでコメントを述べた万璃音。すでに2月にはミサノとヴァレルンガでそれぞれ2日間のプライベート・テストを実施、3月にはムジェロとイモラでそれぞれ2日間のプライベート・テストが予定されている。
未成年が海外旅行するのはいまどき珍しくもない。しかし、外国に長期滞在するケースはあまりなく、衣食住はもちろん高校生としての学業や私生活はどうなのか? といった覗き見的な興味はどうしても湧く。また、日本では情報が少ないFIA-F4イタリアに関しても万璃音をとおして知りたい。
そこでこのたび、「"Marino Racing" 佐藤万璃音/高校生ドライバーのイタリアン・レーシング・スタイル」というタイトルで2月末から11月末までの合計10回、『AUTOSPORTweb』で連載記事を掲載する運びとなった。万璃音の私生活、ヨーロッパのジュニア・フォーミュラの現状などを写真とともにお楽しみいただければ幸いだ。