更新日: 2022.12.15 08:17
【RQインタビュー】勝利の女神が感じたスーパーGT王座決定の瞬間の心境とその裏側
一方、GT300クラスはチャンピオン争いの行方が二転三転する波乱の展開となった。そんな中、リアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rを応援するリアライズガールズも様々な感情が駆け巡った週末となった。
「(最終戦のサーキットに入る前は)けっこう自分たちのなかでは、チャンピオンが絶対に獲れるというくらいのモチベーションで来ていましたね」と織田真実那さん。「今年はレースクイーンのメンバーがみんな仲良くて、普段から遊んでいる時も56号車の話になって本当に一体感がありました」と最終戦前もリアライズガールズ4人の間でチャンピオン争いの話は盛り上がっていたようだ。
そんな中、GT300クラスの予選では、対抗馬として注目を集めていたSUBARU BRZ R&D SPORTがQ2でまさかのクラッシュを喫してしまった。これにより、56号車陣営にとっては有利な展開になったように見えたのだが、近藤真彦監督をはじめ同チームのドライバーたちに一切笑顔はなく、それを見守るレースクイーンたちも複雑な心境だったという。
「(61号車のクラッシュを見て)そこで喜んだりとか、騒いじゃいけないなと思いました。何か、そういうことをしたら、今度は私たちのチームにも不運が来そうな気がしたから……。とにかく、静かに見守っていようと思いました」
「でも、僅差で争っていて、せっかく面白いレースが観られるはずだったのに、競り合っていた61号車がスピンをしてしまったことは残念でしたね。ちゃんとした勝負を見たかったです」と織田さん。
その隣でモニターを見つめていた原あゆみさんも、不安にも似た気持ちになっていた。
「なんか衝撃を受けた感じでした。『やったー!』という感じにはならなかったです。逆に『56号車もこうなったら、どうしよう?』という気持ちになっていました。何があるか本当にわからないなと思いましたね」
そして始まった日曜日の決勝レース。序盤からアクシデントが立て続けに起きるなど、近年稀に見る荒れ模様となった。その中でも、GT300クラス7番手からスタートした56号車は、順調に周回を重ね、ドライバー交代を済ませたレース後半には4番手に浮上。
このまま行けば、表彰台圏内でのフィニッシュも見えていたのだが、残り20周を切ったところで、突然タイヤが外れるトラブルに見舞われ、一気にチャンピオン争いの行方と56号車ピットの状況が一変した。
「何も起きなければチャンピオンを獲れる状況だったので、とにかく『何も起きないで』と祈っていました。ただ、序盤から多重クラッシュとか、いろいろトラブルがあって、お願いだから56号車は巻き込まれないでほしい……」
「ちょうどそんな話をレースクイーン同士で話をしていた時に、タイヤが取れてしまって……。『本当にこんなことがあるのか?』『何を悪いことをしたんだ?』って、そんなことを考えていました」と織田さん。
原さんも「その時、私たちはパドック側のテントのなかで見ていたんですけど、みんな何も言葉も出ない感じで……泣いていました。場内実況でも『チャンピオンは厳しい』みたいなことを言われていたので、そこで『(チャンピオンは)ないな』という感じになっていたから、みんな泣いていました」と振り返る。
一時はチャンピオン獲得が絶望的かと思われた56号車だったが、ピットで応援するリアライズガールズたちは最後まで応援を諦めることはなかった。
「可能性は低くなったなと思ったのですが、タイヤが取れても、ピットまで戻ってこようとしていたから『最後までちゃんと応援しなきゃ』という感じで、ずっと応援していました。そこからは『奇跡よ起これ!』みたいな感じで祈っていました。本当にどこかで何かがないかなというのを、みんなでずっと祈っていました」と織田さん
「その時は一瞬『もうダメなんだ』と思いましたけど……でも、どうにかして『何か方法はないのか?』『どうにかして56号車がチャンピオンになれないのか?』というのを、みんなで考え始めていました」
「実はファンの方が作ってくださったポイント表があって、それを見て、みんなで計算していました。それで『他のチームの順位次第では、もしかしたら……』ということに気づいてからは、みんなで祈るように応援していました」と原さん。
織田さんは「あんなに他のチームを応援したことはなかったですね(苦笑)」とコメント。原さんも「残り10周くらいになって、私たちもピットに行ったんですけど、ちょうど可能性が出始めた時だったんですけど、チャンピオンの可能性が少しずつ近づくたびに、みんなで喜んでいました。でも、ギリギリまでわからなかったので、ずっと祈っていました」とレース終盤を振り返る。
「本当に祈りすぎて……私たちもお互いに手を握りすぎて、手汗がヤバかった(笑)。チャンピオンが決まった瞬間は、全員が大泣きでしたね。あんな経験をレースクイーンですることは、今後ないだろうなと思います」と織田さん。
ライバルチームのポジションダウンもあって、最終的にチャンピオンを手にすることができた56号車。王座が確定した瞬間は、リアライズガールズたちも、大泣きしながら喜んだようだ。
なかでも、リアライズガールズ3年目となる織田さんにとっては、2020年の56号車以来となるチャンピオン決定の瞬間を間近で見ることになったのだが、その時とは心境がまるで違うという。
「2020年のチャンピオンの時は、現場に来れなくて、ニッサンの本社で開催されたパブリックビューイングで観ていたのですが、正直あまり臨場感がなくて、ただ『嬉しい!』みたいな感じはありました。だけど……今回は、自分のことのようにという感じで、全然違いましたね」
「今年はスーパーフォーミュラでもリアライズガールズとしてKONDO RACINGを応援させていただいていて、よりチームの皆さんとご一緒する機会も増えましたし、ここまで良いチームはさすがにないと思ってレースクイーンを務めていたので、本当に嬉しかったですね。私のレースクイーン史上に残るいちばんの思い出になりました」と織田さん。
一方の原さんは、2021年に別のチームで最終戦にチャンピオン決定間近というところから、不運なアクシデントに見舞われ、悔しい結果を味わったメンバーのひとり。今回は歓喜の瞬間を味わうことができ、改めてレースの魅力に触れることができたという。
「正直、タイヤが取れた時は……昨年の最終戦、別のチームで経験したことが頭によぎりました。昨年のチームもこのまま行けばチャンピオンという、安定的な感じてきていて、今回も同じような流れでした。だから『今年も最後は喜べないのか』という感じで思いました」
「けれど最後は笑顔で終わることができて嬉しいですし、改めて『レースは面白いし、奥が深いな』と思いました」と思いを語る。
年々、劇的な展開でチャンピオンが決まることが多くなっているスーパーGT。今年もいろいろなドラマが生まれたのだが、各チームを応援するレースクイーンたちにとっても、思い出に残るシーズンになったことは間違いないだろう。