スーパーポールのシュートアウトこそ、リヤモーターの故障により5番手に甘んじた44歳だったが、パンクで落としたヒート1に続きヒート2、ヒート3と連勝を飾ると、そのままセミファイナル1、そして緊迫のファイナルでも経験者ケビンを打ち負かし、タイトル戦線でもランキング3位に急浮上する感涙のWorldRX初優勝を飾った。
「今これを説明するのはかなり難しいよ」と第一声を発したシャイダー。「かなり感情的になっている。僕はしばらくこの勝利を追いかけてきたし、必ずしも簡単なことではなかったが、戦い続けてきた。WorldRXの競争のレベルは非常に高く、ヨハン(・クリストファーソン)に勝つことがいかに難しいかは誰もが知っている。僕自身とチームを誇りに思うし、この勝利を昨年亡くなった父に捧げたい」
通算45回の世界選手権出走を果たし、これまで3回の表彰台に留まってきたシャイダーだが、週末を前にした全員の予想が「間違っている」ことを証明したパフォーマンスに、自身も驚いていることを明かした。
「南アフリカに来て、こんなことになるとは予想していなかった(笑)」と正直に続けたシャイダー。
「でも僕らにとってチャンスになることを期待していた。なぜなら、競争力あるRX1eマシンを持っていない(従来はセアト・イビーザRX1eをドライブ)ことを知っていたからね」
「ただし『ZEROID X1』についてはまったく知らない状態で、僕らはそれを運転したことも、運転する機会もなかった唯一のチームだった。だからすべてを現場で解決する必要があったんだ……」
そんなドイツ出身のニュルブルクリンク、スパの24時間レース“ダブル”ウイナーが、ケープタウンでフィニッシュラインを通過した際、最初に思い出したのは昨年11月、自身の誕生日の前日に亡くなった父親のヴォルフガング・シャイダーだったという。
「小さい頃から両親の強いサポートを受け、BMXレーサーから9歳でカートに乗った。両親は二輪より四輪の方が安全だと判断したんだ。お金があまりなかったし最初はかなり大変で、両親は懸命に働き僕のキャリアに全力を注いでくれた。だから、この週末は父が上から見ていたことも知っているんだ」
そのシャイダーも、現在は長男のロリスが次世代を担ってくれることを楽しみにしている。
「彼はカートを始めてかなり速かったが『友人と過ごしたい』という正直な意思を尊重して、少しこの世界を離れていた。でも彼が16か17歳になり、免許を取得したとき『何かレースができるかだろうか』と尋ねてきたんだ! 彼は今スーパーモトに完全に夢中で、フリースタイルに挑戦している」
「僕の目標のひとつは、いつか耐久レースで彼とマシンをシェアするか、何かで互いに競い合うこと。それは本当にクールだろうね!」
初優勝を挙げたシャイダーの存在により、クリストファーソンの王座確定に待ったが掛かったWorldRXは、引き続きダブルヘッダーとなる11月12~13日に、香港はセントラル・ハーバーでの初開催イベントで雌雄を決する。



