こうして王者が苦戦を強いられる展開のなか、晴天と大雨の間を揺れ動く天候にもかかわらず速さを披露したのが地元出身ドライバーたちで、10ステージを通じて計3度にわたって総合首位を入れ替えながら、リンナマエを約1秒リードしたヴィルヴェスがレグ1首位に立った。
「公平に言えば、楽しむことが大事だ。なぜなら、楽しむ方が物事はうまくいくことが多いからね」と、自身もスピンやアクシデントに遭遇していたヴィルヴェス。「地元イベントで戦うことには余計なストレスはないし、ベストを尽くすだけさ」
落ち着いてそう語った23歳は、明けた日曜最初のループでも3本中2本でベストを記録し、リードを拡大する。
一方、SS12で反撃しヴィルヴェスのリードを2.9秒に縮めたリンナマエも、最終ステージを前に9.3秒まで差を拡げられ、これで勝負あったかと思われた。
しかし激しい雨と強風により危険なコンディションと化した最終パワーステージを前に、リンナマエはミシュランのソフトコンパウンドを選択。これが路面条件にピタリとハマり、ピレリを履いたヴィルヴェスを11.5秒上回るスーパーベストを叩き出し、2.2秒差での大逆転勝利を飾ってみせた。
「信じられない! もちろん全力を尽くしたが、パワーステージは本当にクレイジーだった」と望外のERC初勝利を喜ぶリンナマエ。
「ほぼすべてのコーナーでチャンスがあり、人生でもっとも大胆なステージになった。何もかもを出し切ったよ……。最後のステージを前に、大きな仕事が待ち受けていることはわかっていたが、タイヤの選択が報われると理解していた。本当に素晴らしい、素晴らしい戦いだった。ラリーカーで経験した中でもっとも楽しかったよ、最高だ!」
一方、初優勝を逃したものの、先日のWRCポーランド戦に続く自身ERC初ポディウムの2位を得たヴィルヴェスも「誰にとっても簡単なことではない。意外な穴などもあり、ドライブするのは簡単ではなかったが、かなりいい走りができた」と語り、それぞれ26歳と24歳になる誕生日を祝う結果となった。
前日の遅れから立ち直り5位カムバックを果たしたパッドンが、暫定順位で10ポイントリードとした2024年のERCシーズン。折り返しとなる第5戦は、世界的に有名なコロッセオ前のSSSがハイライトでもあるターマック戦『ラリー・ディ・ローマ・カピターレ』が7月26~28日に開催される。



