その背後では、2番手から6番手までが14.5秒差にひしめく混戦のなか、イギリス選手権登録でレグ1最大ポイントを獲得したイングラムが、往年のカストロールカラーを彷彿させるリバリーのGRヤリスでの実戦初日に安堵の声を漏らす。
「本当に厳しい1日だった。ちょっと試練のようだったよ。明日はリセットしてもう少し頑張るつもりだ」
これでレグ1は、スタンディング上でパッドンを追うマシュー・フランチェスキーニ(シュコダ・ファビアRSラリー2)とマルチェクに続き、クローニンの続くトップ5に。
その一方で、一時はSS7で3番手まで浮上したテンペスティーニは、続くステージで「左コーナーで少し泥があって、すぐに滑り始めて草むらのなかに突入した。何が起こったのかはよくわからないが、何かにぶつかって右リヤサスペンションに問題を抱えた」として後退。
同じく前夜の10番手からSS3で初のERCステージトップタイムを刻んだウェールズ出身のジェームズ・ウィリアムズ(ヒョンデi20 Nラリー2)も「危険だった。あれは僕のホームステージだったし、あのスピードでそこを走れるなんて信じられない気分だ。言葉では言い表せないほどうれしかった」と語ったものの、続くSS4の1.5km地点で無念のクラッシュ。ここでi20 Nラリー2がステージを塞いだため、アクションは10台で中断されることとなった。
迎えた最終レグ2は、雨が降り始めて滑りやすくなる条件でいきなりの犠牲者が出る展開となり、日曜オープニングステージで激しいクラッシュを喫した総合2番手のイングラムがここでラリーを去ることに。
これで最大の追走者が消えたパッドンは、この日のSS8本中7本でベストを記録し、最終パワーステージのボーナス5点も加算するラリー運びで今季7人目のウイナーに輝いた。
「とても良い週末だった」と2年連続のERCタイトル獲得に向け、足場を固めたパッドン。
「すべてが時計仕掛けのようにうまくいったよ。チームのみんなのおかげだ。彼らは1年間、ずっとマシンの調整に懸命取り組んできたし、それが今週末すべてがうまくいった要因だ」と、イタリアBRCレーシングに自身が運営するPRG(パッドン・ラリー・グループ)の混成クルーを称えたチャンピオン。
「マシンだけでなくピレリタイヤもこの状況でうまく機能した。ペースノート、ジョン(・ケナード/コドライバー)、すべてがうまくいけば簡単さ。僕らは長い間この感覚を追い求めてきたが、今週末ようやくその感覚を得ることができたね」
その背後ではパワーステージでの逆転劇も生じ、スタート時点で総合4番手だったメベリーニが2位へジャンプアップ。3位にフランチェスキーニが続き、4位にドロップしたマルチェクがタイトル争いから脱落する結果となった。
これで暫定順位で2位フランチェスキーニに27ポイント差をつけたパッドンだが、10月11~13日にポーランドで開催される最終戦『ラリー・シレジア』では最大35ポイントが獲得可能となり、まさにこの1戦の結果がタイトルを左右する天王山となる。



