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投稿日: 2024.12.30 00:00
更新日: 2024.12.30 11:36

WRCが導入した狂気の“スーパーサンデー”。新たなジレンマと、6度のどんでん返し


ラリー/WRC | WRCが導入した狂気の“スーパーサンデー”。新たなジレンマと、6度のどんでん返し

●第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ

 ケニアに引けを取らない過酷さを誇るアクロポリス・ラリー。2024年も猛威は健在で、ほぼすべてのマシンを順番に襲っていった。

 マニュファクチャラー選手権に登録された全8台にはそれぞれトラブルが発生し、ラリー初日から過酷な戦いが繰り広げられたが、そのなかでもヒョンデ勢はもっともロスを抑えた走りを見せ、3台で表彰台を守り続けていた。

 マニュファクチャラー選手権を逆転すべくトヨタに招集されていたオジエは、そのヒョンデの牙城を崩すためにも“スーパーサンデー”をプッシュし、総合2番手/日曜1番手という位置まで追い上げて最終ステージを迎えた。

 トップのヌービルとは総合順位で1分以上の差があるため、オジエが狙うのは日曜最速だったが、パワーステージを走り始めた彼の位置情報は、序盤で突如ロスト。公式映像には映されていなかったが、ここでオジエは横転を喫しており、大ダメージを負ったマシンとともに5分44秒8遅れで最終ステージから生還した。オジエが手中に収めかけていた日曜の大量ポイントは、ギリシャの砂塵となって吹き飛んでしまった。

第10戦レポート:ギリシャの女神、ヌービルに微笑む。最終SSでオジエがクラッシュ

2024年WRCが生んだ狂気の“スーパーサンデー”。ラリーらしいジレンマと6度のどんでん返し
セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2024年WRC第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ

●第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー

 シーズンもいよいよ佳境に差し迫まる第12戦。ドライバーズ選手権がほぼヌービルの獲得路線で進んでいくなか、トヨタとヒョンデのマニュファクチャラー争いは一層緊迫した局面を迎えていた。

 両陣営は、ラリー序盤から互いにエースの2台をプッシュさせて前線に送り、3台目を5~6番手に控えさせるという戦いが繰り広げると、土曜日ではオジエ、タナク、エバンス、ヌービルという順位となり、この時点ではトヨタが優勢となっていた。

 しかし、日曜の結果次第で簡単に得点状況がひっくり返るのが2024年のWRC。日曜日には、ここまで3台目の役割をこなしていた勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)も加勢し、“スーパーサンデー”の獲り合いが勃発した。

 このなかで、若干ペースを掴めていない様子だったオジエの歯車が狂い、開幕ステージでコースアウトし10秒をロス。これでタナクに総合首位を易々と奪われた。それでも懸命にプッシュを続けたオジエだったが、ミスがあったステージのループ2走目にて、土で汚れた路面に足を取られてコントロールを失ってしまった。そのままオジエのGRヤリスは電柱に正面衝突して万事休すとなり、タナクが総合優勝。トヨタとヒョンデは15ポイント差がついたままに最終戦へ進むこととなる。

第12戦レポート:“魔の森”がオジエを襲う。タナクが逆転で今季2勝目

2024年WRCが生んだ狂気の“スーパーサンデー”。ラリーらしいジレンマと6度のどんでん返し
セバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2024年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー

●第13戦ラリージャパン

 いよいよ迎えた最終戦は、日本が舞台となるラリージャパン。苔と枯れ葉に覆われたターマックでは、荒れやすい天候も相まって毎年波乱が起こってきたが、今年はこれまでで一番とも言える劇的な展開が待っていた。

 2024年のラリージャパンはトヨタの大逆転王座に注目が集まる一方で、第12戦でドライバーズチャンピオンを決めきれなかったヌービルと、逆転タイトルには優勝以外に道はないタナクの争いも熾烈を極めた。

 ヌービルが無得点、タナクがフルポイントといった状況でのみ逆転が起き得たふたりの戦いは、ヌービルがマシントラブルで失速(噂ではターボトラブル)したのに対して、タナクが土曜日にトップを奪う流れとなり、一縷の望みが繋がりつつあった。

 対してマニュファクチャラー争いでは、エバンス、オジエがツー・スリーに控え、勝田貴元も5番手に待つ状況とトヨタがうまくラリーを進めていた。そして迎えた最終日の1本目で、状況が大きく動く。

 自身2度目のドライバーズタイトルが欲しいタナクは、“スーパーサンデー”も勝ち切るべく日曜1本目からプッシュする。ステージ後半にかけては区間タイムで全体ベストを刻み始め、最終日も速さは健在かと皆が思った時だった。日陰に広がっていた泥に高速で乗り上げたタナク車はアンダーステア状態となり、曲がり切れず路肩へダイブ。勢いそのままに段差へ乗り上げ、空を舞った。

 これでドライバーズタイトルはヌービルの手に渡り、さらにマニュファクチャラー争いも大きく変化。残すはパワーステージのみという状況で、トヨタとヒョンデのポイントが同点に並んだ。そして、最終タイムアタックでオジエが驚異的な速さを披露し、トヨタが大逆転のマニュファクチャラー4連覇を飾った。

第13戦レポート:トヨタ、最終日に大逆転で4連覇。ヌービル初戴冠

2024年WRCが生んだ狂気の“スーパーサンデー”。ラリーらしいジレンマと6度のどんでん返し
オット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1) 2024年WRC第13戦ラリージャパン

“スーパーサンデー”の導入初年度となった2024年WRCは、日曜日の戦い方が選手権を大きく左右した。各チームは、戦略もそれに応じたものへと適応させていたため、2023年までのポイントシステムを今季の各順位に当てはめてみても、もはや大した参考にはならないのかもしれない。

 それほど大きな影響を及ぼした“スーパーサンデー”は、2025年には最大得点数が7ポイントから5ポイントへと縮小調整されることになっているが、それでもポイント配分は土曜までで約70パーセント、日曜日のみで約30パーセントとなるため、引き続きタイトル争いのカギとなることは間違いないだろう。

 2025年WRCの第1戦『ラリー・モンテカルロ』は、約1カ月後の1月23日に開幕する。


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