そしてエンジン以上にこの新型マシン最大のハイライトとなるのが、そのブレーキシステム。キャリパーは前後共に4ポッドとなるものの、その搭載位置を“インボード”とする独創的なソリューションを採用。
フロントブレーキはギヤボックスケーシングに取り付けられ、リヤブレーキはリヤデファレンシャルの両サイドに配置された。
この決断に至った最大の理由は、バネ下重量の軽減だとプロドライブは説明するが、これによってダブルウィッシュボーンの前後サスペンションは理想的なレバー比を実現するための自由度も手に入れ、かつ軽量ホイールの採用によりさらに4輪のコーナーウエイトも削減するなど、運動性能に対して理想的な解決策になった、と自信をみせている。
また、昨季のチャンピオンマシンとなったフォルクスワーゲン・ポロGTI RXスーパーカーなどのように、クーリングに必要なラジエーターやインタークーラーをフロントに搭載することはせず、それらはすべてリヤハッチ内のラゲッジ部分にマウントするというラリークロスの伝統的スタイルを踏襲。
これは接触が多いラリークロスの世界で、コンタクトによる冷却器の損傷を防ぐためのトラディショナルなデザインではあるものの、前後重量配分の観点からもこの判断に至ったとみられ、リヤのクォーターパネルから取り込んだ新気をリヤフロアから引く抜く設計とされた。
このユニークな新型ラリークロス車両のテクニカルディレクターを務めたのは、プロドライブがジョイントしていた時代に、SWRT(スバル・ワールド・ラリー・チーム)でも同職を務めたデビッド・ラップワースその人で、会場では「今年、私が手がけた2台のマシン、つまりアストンマーチンの新しいGTEカー(アストンマーティン・バンテージGTE)と、このRXプロジェクトのルノーは、私がこれまでプロドライブに在籍した34年間の歴史において、最も優れたマシンデザインを採用したモデルだと言い切れる」と、その性能に自信を見せている。
「もちろん、私たちが絶対的な自信を持っていたとしても、競争の世界というのはつねに相対的なものであることは理解している」と続けたラップワース。
「それでも、34年前の仕事を上回れないのだとしたら、我々は我々自身に失望することになる。そうでなくとも、この2台のマシンは本当にこのプロドライブの歴史上で最も完成度の高いマシンだと言っていいと思う」


