一部に霧がでるトリッキーなコンディションでスタートした注目のSS1、勝田はベストタイムでまずラリーをリードした。
デイ1では計3本のベストタイムを刻んだが、午後のステージで硬めのハードタイヤを選んだことがマイナスに作用してしまう。充分なグリップを得られず、WRC2クラス2番手にとどまった。
しかし、デイ2では本来のスピードを発揮し、6本のSSのうち、4本でベストタイムを刻むと首位に浮上した。地元の強豪アルベルト・ヘラーに12.8秒差をつけた。

ラリー最終日も勝田はベストタイムで差をひろげ、その後、ヘラーのクラッシュアウトで勝利を決定づけた。最終的には全16本のSSのうち、8本のSSでベストタイムを記録。2番手に3分6秒という大差をつけて圧勝した。
決して簡単ではない、むしろ難しいステージコンディションだったが、チリでの勝田の走りには一貫性があった。大きなミスはなく、路面に合わないハードコンパウンドを履いて充分なグリップが得られなかったときも、冷静さを失わずに遅れを最小限にとどめた。
ラリー全体のマネージメントという点では非常に大きな成長が感じられ、今シーズン一番の充実した内容だったといえる。ただし、純粋なスピードに関してはさらなる改善が必要だ。
それは、今季よりマニュファクチャラーが登録した選手が対象となる『WRC2プロ』というカテゴリーが新設されたためだ。このカテゴリーには強豪選手数名がエントリーしているが、いずれもマシンは勝田とおなじくR5車両であり、プロも含めたR5マシン全体の結果をみると勝田は4位。プロ優勝のカリ・ロバンペラとのタイム差は約5分40秒と大きく開いており、それを考えるとWRC2での優勝を手放しで喜ぶことはできない。

その事実を誰よりも認識しているのは勝田自身だ。優勝を喜びながらも、「毎日、ステージのキャラクターが大きく変わりとても難しくて、多くの課題が見つかったラリーでした。さらに成長しなければ、トップクラスの選手とは戦えないと実感しました」と謙虚だった。
勝田は、一部のステージではロバンペラや、元WRCワークスドライバーのマッズ・オストベルグに匹敵するタイムも出している。つまり、すでに一発の速さを備えていることは間違いない。
その速いタイムをすべてのステージで安定してだせるかどうかが、彼らトップクラスの選手との違いであり、勝田にまだ足りていない部分である。