これら3基のMGUアッセンブリーは専用の低温回路を介して互いに接続され、車両のフロントに設置されている左側のラジエーターを使用して熱を逃がす仕組みとなっている。しかし強い日差しの下でも優れた冷却効果を発揮させるのは、エンジニアリング上でも困難な課題であり「気温40℃の砂漠で60℃のクーラントを冷却する場合、温度差が少ないため高い冷却性能を達成することが難しい」とフレベル。
こうした低温回路用ラジエーターの前方にある左側フロントエアダクトの中には、オイル冷却用のループも設置され、オフロード走行時に高い負荷を受けるパワーステアリングの作動油が循環。このシステムはまた、パンクによってタイヤ交換を余儀なくされた場合に、バルブ経由で左右2本のジャッキへ油圧を供給する。
その対面となる右側フロントエアダクトの中には、エアコンディショナーシステムのコンデンサーも収められ、車内に設置されたファンがキャビン内の空気を循環させる。
助手席後方に横置きされる高効率な発電用TFSIエンジンは、ラジエーター付きのフルード回路を備え、エンジンオイルのラインは熱交換器を介してこのシステムに接続される。排気ガスを利用するターボチャージャーには冷却システムが必要で、圧縮された吸気はインタークーラーを経由して発電用エンジンへと送り込まれる。
そのラジエーターおよびインタークーラーはリヤアクスルの上に並列に配置され、ルーフ上のカウルは、2基のラジエーター用にエアフローを分割する。
「過酷な走行区間……たとえば低速で砂丘を横断するようなところでは、エアフローが不足する可能性もある。そのため2基のラジエーター後方にファンを設置し、必要に応じて暖気を取り除くことができるようにしているんだ」
こうしてパワーユニットの冷却で発生する明らかな電力損失にもかかわらず、アウディはきわめて高効率なデザートプロトタイプを完成させ、約200kWの最高出力を発生する発電用TFSIエンジンは、4500~6000rpmの間できわめて効率的に作動。発電のための燃料消費量は、1kWhあたり200gをはるかに下回るという。
「熱管理システムは11月にモロッコで最終調整を行った。この長期テストでは冷却用エアインテークを意図的にテープで塞ぎ、カルロス・サインツに干上がった川床の柔らかい砂地を走行してもらったんだ。このような状況でも、すべてのシステムが問題なく機能したことを確認している」と自信を見せたフレベル。
2022年のダカールラリーは開催3年目となるサウジアラビアで、現地時間1月2日(日)に開幕。約8000kmを走破した同14日(金)にフィニッシュを迎える。

