ラリー/WRC ニュース

投稿日: 2022.02.18 18:11
更新日: 2022.02.19 12:25

【WRC2022年シーズンの楽しみ方】ラリー1規定導入の変化。ハイブリッド化で対トヨタの“下剋上”も


ラリー/WRC | 【WRC2022年シーズンの楽しみ方】ラリー1規定導入の変化。ハイブリッド化で対トヨタの“下剋上”も

 新規定の“目玉”であるプラグイン・ハイブリッドユニットについても、コスト削減の観点から全車が共通仕様のシステムを使用する。シェフラーの子会社であるコンパクト・ダイナミクス社が開発したユニットは、MGUとコントローラー、容量3.9kWhのバッテリーが一体化され、システム重量は87kgとなっている。

 電気モーターによって生み出される最高出力100kW(約134PS)/最大トルク180Nmのハイブリッドブーストは、リヤデフを介してドライブシャフトに伝達される仕組みだ。ハイブリッド走行はもちろん、最大20km程度のEV走行も可能となっている。

 一方の充電はブレーキング時の最大30kWの回生と、サービスパーク内に設置された電源設備からプラグイン充電によって行われる。

フォード・プーマ・ラリー1(上)、フォード・フィエスタWRC(下:左右反転)
フォード・プーマ・ラリー1(上)、フォード・フィエスタWRC(下:左右反転)
フォード・プーマ・ラリー1(左)、フォード・フィエスタWRC(右)
フォード・プーマ・ラリー1(左)、フォード・フィエスタWRC(右)

フォード・プーマ・ラリー1 フォード・フィエスタWRC
全長 4130mm
全幅 1875mm 1875mm
ホイールベース 2600mm 2493mm
車両重量 1260kg 1190kg
エンジン
形式 直列4気筒直噴ターボ 直列4気筒直噴ターボ
排気量 1600mm 1600mm
最高出力 380hp(約385PS) 380bhp(約385PS)
最大トルク 420Nm 450Nm
ボア×ストローク 83.0mm×73.9mm
エアリストリクター φ36.0mm φ36.0mm
ハイブリッドユニット
最高出力 100kw(約134PS)
重量 95kg
トランスミッション
形式 5速機械式シーケンシャル 6速油圧式シーケンシャル
(電子制御セミAT/パドルシフト)
駆動方式 4WD 4WD
デファレンシャル 機械式(フロント/リヤ) 機械式(フロント/リヤ)、アクティブ(センター)
サスペンション
形式(フロント/リヤ) マクファーソン・ストラット マクファーソン・ストラット
ブレーキ仕様(グラベル) φ300mmベンチレーテッドディスク/空冷4ポッドキャリパー φ300mmベンチレーテッドディスク/空冷4ポッドキャリパー
ブレーキ仕様(ターマック) φ370mmベンチレーテッドディスク/空冷4ポッドキャリパー 前:φ370mmベンチレーテッドディスク/4ポッドキャリパー
後:φ355mmベンチレーテッドディスク/4ポッドキャリパー
ホイール OZ Racing OZ Racing

 ハイブリッド化にともなうスポーティングレギュレーションの変更によって、すべてのラリー1カーはサービスパーク内でEV走行が義務付けられる。この際、バッテリー保護の観点から出力が50%に制限される。

 また、リエゾン(移動区間)の一部にも“HEVゾーン”と呼ばれるエリアが設定され、指定箇所ではエンジンを切り電動走行をしなければならない。違反した場合はペナルティの対象に。充電時には感電防止用グローブを着用すること、ドライバーとコドライバー用のグローブも車載することが定められている。

 ステージではバッテリー残量が最大80%の状態でスタートする。エンジンとハイブリッドのフルパワーを使用するスタート時は最大1000kJのエネルギー放出が可能となる“ステージスタートモード”によって最大10秒、もしくはアクセルから足を離すかブレーキを踏むまで100kWのハイブリッドブーストが有効になるが、以降のステージではシステムが“ステージモード”に切り替わり、減速時のエネルギー回生と加速時のエネルギー放出を繰り返しながら走行することになる。この場合のブーストは直前に有効な回生が行われたときにのみ作動する仕組みだ。

1.6リットル直列4気筒直噴ターボエンジンとハイブリッドユニットによるシステム合計出力は最高500PS以上となる
1.6リットル直列4気筒直噴ターボエンジンとハイブリッドユニットによるシステム合計出力は最高500PS以上となる

 ステージモードにおけるハイブリッドブーストの効かせ方や回生量と放出量、タイミングなどは、事前にプログラミングされたマッピングに応じて変化する。チームごとに最大3つまで登録することができるマップは、ステージの途中では変更できない。そのため走行前にステージの走行距離に合ったものを正しく選択することがタイム短縮へのカギとなる。

 なお、エネルギー放出はすべてこのマッピングに基づいたドライバーのブレーキ/アクセル操作に起因して動作し、スイッチ等を用いて手動でブーストを効かせることは不可能だ。

 基本的に各チームともステージ距離が短いほど1回のブーストで得られる放出エネルギーが大きく、反対にロングステージの場合は放出量が小さくなるプログラムを設定し、ステージを通じて最後までモーターアシストを得られるようにしている。

 ハイブリッドシステムに係る安全性を確保する点では、F1やフォーミュラE、WECなどでも採用されているシグナルインジケーターがフロントウインドウ上部とサイドウインドウ上部に装備された。システムが正常に作動している際はグリーンが点灯。異常があり感電の恐れがある場合は赤色を灯す。ランプが消えている状態は赤色発光と同様に危険な状態だ。

ラリー1カーのサイド部にはハイブリッド車であることを示す『HY』の文字が掲出される。車両内外に設置されたインジケーターはシステムの稼働状態を示し、ランプの赤点灯や消灯時は感電の危険性があるため接近禁止
ラリー1カーのサイド部にはハイブリッド車であることを示す『HY』の文字が掲出される。車両内外に設置されたインジケーターはシステムの稼働状態を示し、ランプの赤点灯や消灯時は感電の危険性があるため接近禁止
プラグイン充電は車両左側から行う。20%から80%までの充電時間は約20分
プラグイン充電は車両左側から行う。20%から80%までの充電時間は約20分

■次のページへ:トヨタ、ヒュンダイ、Mスポーツ・フォードの2022年ドライバーラインアップ


関連のニュース