「だから、この電動化プロジェクトも最初から最後までトラビスの信念が貫かれている。このシリーズを“グリーンウォッシュ”にしたくはないからね」と続けたパンコウ。
「もちろん同じ週末に既存のスーパーカーもバトルを繰り広げる。そのうち5%でも良いから、ファンが『クールだ!』と思えるようなエレクトリック・カテゴリーを創出したいんだ」
このFC1-X自体は、ラリークロス界の名門ビルダーとして活動する北欧のオルスバーグMSEと、スペインの電動モビリティ企業であるQEVテクノロジーズが共同開発しており、ピークパワーは800kW(約1070PS)と、現行の内燃機関スーパーカーに対して“倍”の出力を誇る。
その出力をフロント1速、リヤ3速のサデフ製トランスミッションを介して伝達し、電動レースカーとして初めて、プロペラシャフトに接続されたハンドブレーキを搭載。リヤの駆動をロックさせる方法として、後輪へのモーター出力を単にカットする従来型EVでの既存の方法より、多くの感触をドライバーにもたらすという。
最高速は180マイル(約290km/h)をマークし、1100Nmという途方もない最大トルクと、350mmの最大ホイールトラベル量により抜群のトラクション性能も発揮し、0-100km/h加速はわずか1.4秒。さらに適切な路面条件下では1秒切りも達成可能だという。
「実際には非常に機敏で(現在のフォード・)フィエスタよりは大きいが、ホンダ(・シビック・クーペ・タイプR)よりは小さい」と、製造を担当したオルスバーグMSEのアンドレアス・エリクソン代表。
「どこから説明を始めれば良いか分からないぐらい、既存のEVレースカーとは異なる点がたくさんある。従来のコンバーターではなく炭化ケイ素(SiC)コンバーターを採用するのもそのひとつだ。実際に目の前で披露すること以外に、すべてを説明するのは難しいね」
コスト面でも既存のICE(内燃機関)搭載スーパーカーを価格面で下回る「持続可能性」が狙われており、すでに14台のFC1-Xが販売され、16台の車両が製造を終えている。初期のカスタマーにはドレイヤー&レインボールド・レーシング、グロンホルムRX、エキサイト・エナジー・レーシングなどのチーム名が明かされており、この3月上旬からさらなるデリバリーが進められる。

