そのエクストリームEでは初年度開幕戦のみ自らステアリングを握ったものの、第2戦からはWorldRX界の最速兄弟、ハンセン・ブラザーズの弟ケビンを起用したバトンだが、現在カリフォルニアに拠点を置く2018年のスーパーGTシリーズチャンピオンは、今後の活動を考えた際に米国を拠点とするシリーズへの参戦が最も可能性の高い選択肢だと考えられてきた。

 実際、2015年にラスベガスで開催された当時のGRC(グローバル・ラリークロス)最終戦の会場にも姿を見せ、2年後のマイアミではレース・オブ・チャンピオンズ(RoC)開催に先立ち、セブリングで北欧の名門オルスバーグMSE製のホンダ・シビック・クーペ・タイプRのGRC仕様車をテストしている。

「ラリークロスとF1では、昼と夜ほど違いがあるね。だからこそ、ラリークロスが好きなんだ。17年間も過ごしたF1を去ってさらに時が経ち、また何か新しいことに挑戦したかった。僕はF1ドライバーではなくレーシングドライバーだし、新しい挑戦こそが僕にとってのすべてだからね。F1で必要なことを達成したと感じているし、さまざまなことを試すのは良いことさ」

 そのバトンの亡き父ジョンは、地元イギリスで活躍したラリークロス選手でもあり「ラリークロスには本当の家族のつながりを感じる」とも明かす。

「父は1970年代から1980年代にかけて活動し、フォルクスワーゲンのビートルやゴルフでラリークロスに参戦した。彼が来た道を辿りたいし、それは僕にとって特別なことだ。小さいころの僕は、父がレースをするのを見に一緒に会場へ行くのが大好きだったよ」

 一方、バトン加入を実現したベネットも彼の起用に「ワクワクしている」と語り、チームは今月初めにウェールズのペンブリーでテストプログラムを実施。その現場からすでに、F1チャンピオンからの「影響を受けている」という。

「彼がもたらしてくれたサーキットでの経験とともに、誰もがすぐに気づくもののひとつがそのプロ意識だ。クルマ、エンジニア、チーム、そして周囲のみんなを最大限に活用する方法を知らなければ、F1で世界チャンピオンになることはできないからね。僕らは彼と一緒にいることで、すでに組織として大きな恩恵を受けていると感じるんだ」

 バトンとベネット、ふたりがドライブする予定の『FC1-X』は、開発担当者いわく「世界で最も速く、最も有能なラリークロス車両」というコンセプトを具現化させたものになり、約800kW(約1070PS)を超えるピークパワーにより、0-100km/h加速はわずか1.4秒。さらに適切な路面条件下では1秒切りも達成可能だという。

 また、1100Nmという途方もない最大トルクと350mmの最大ホイールトラベル量により抜群のトラクション性能も発揮し、最高速は180マイル(約290km/h)をマークするなど現行の内燃機関スーパーカーと比較しても“未知のパフォーマンス”を有している。

電動レースカーとして初めて、プロペラシャフトに接続されたハンドブレーキを搭載し、炭化ケイ素(SiC)コンバーターなども採用する『FC1-X』
電動レースカーとして初めて、プロペラシャフトに接続されたハンドブレーキを搭載し、炭化ケイ素(SiC)コンバーターなども採用する『FC1-X』
チームは今月初めにウェールズのペンブリーでテストプログラムを実施し、大いに影響を受けたという
チームは今月初めにウェールズのペンブリーでテストプログラムを実施し、大いに影響を受けたという

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