そのモンゾンとは対照的に、2番手につけながら苦しい1日を過ごしたのがソランスで、ひさびさの実戦と今季初のターマックで充分なセットアップ機会を持たぬまま過ごした午前は、フロントタイヤのオーバーヒートに悩まされ15.1秒のビハインドを背負う。しかし、午後のステージに向け「根本的な変更」が施されたポロGTI R5はスピードを取り戻し、ボナートのシトロエンやMRFのヤレーナも捉えて2番手で初日の本格ステージ群を終えた。
迎えた最終土曜もオープニングステージとなったSS8で首位モンゾンが3秒のマージンを稼ぐが、続くステージで彼のファビアが装着するタイヤに釘が刺さっていることが発覚。まさかの事態が発生するも、ステージ間で交換作業に割く時間は取れず、スタート後4.3km地点で限界を迎えたタイヤは敢えなくパンク。モンゾンはそのままリタイアを強いられることに。
これでラリーリーダーを引き継いだソランスは、2番手ボナートに対し10.4秒差で午後の最終ループに挑むと、リスクを避けたクルージング……ではなく「地獄のプッシュ」で最後のタイムコントロールに到達。結果的に11.2秒差にギャップを拡大して今季2勝目を手にした。
「ここで勝てるなんて本当に素晴らしいことだ! すべてのファンやスポンサー、そしてチームにも感謝しなければならないね。この勝利は絶対的に彼らのものであり、彼らなしではこれを達成することは出来なかった」と、勝利の喜びと同時に周囲への謝意を述べたソランス。
「イベント前のテストを行う時間もお金もなかったし、僕らはラリーの間、物事を変えて改善し続けてきた。もちろん、それでも100%ではなかったし、本当に長いコーナーがたくさんあって、そこでスピードを維持するのが難しかった。おそらくそれはディファレンシャルやダンパーなどが要因だったと思う」と振り返ったソランス。
「この勝利は、チャンピオンシップのために戦っているときに、予算をまとめるのに役立つ良いガイドのようなもので、大いに後押しになると思う。次戦のポーランドでも競争したいし、そのためのサポートを見つけることができるかどうか。今後も努力を続けていくよ」
そのウイナーの背後では、最終パワーステージでボナートを捕らえたMRFのヤレーナが11.2秒差の同タイムでフィニッシュ。初日ステージウインを獲得していたことからヤレーナが大逆転の2位に入り、これにより新たなチャンピオンシップリーダーに浮上。
4位にはフォード・フィエスタ・ラリー2をドライブした地元民のエンリケ・クルスが続き、初日にアームコバリアへのヒットで9番手まで後退していたチームMRFタイヤのシモーネ・カンペデッリ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)が、5位までカムバックを果たしている。
続くERC第4戦はソランスの言葉どおり、6月10~12日の会期でラリー・ポーランドが予定され、同国北部ミコワイキを中心としたグラベルステージが待ち受ける。


