ラリー/WRC ニュース

投稿日: 2022.05.26 07:15
更新日: 2022.05.26 09:13

熱中症、シューズが溶けたとの報告も「真冬でもめちゃくちゃ暑い」ラリー1カーの過酷な車内/WRC


ラリー/WRC | 熱中症、シューズが溶けたとの報告も「真冬でもめちゃくちゃ暑い」ラリー1カーの過酷な車内/WRC

 なお、勝田によるとコクピット内の熱源は主にエキゾーストパイプであるという。暑さの原因がハイブリッドシステムによるものか、との質問に対し、彼は「もちろんハイブリッドの部分もあるとは思いますが、(共通ハイブリッドシステムの)バッテリー以上に、クルマ自体のデザインでエキゾーストを通す配管がもろにコクピットから見てどこにあるのか分かるくらいの場所にあり、そこからの熱がものすごい」と答えた。

「基本的に車内の温度はそこからどんどん上がっていってしまって、それに対処するにはとにかく風を取り込んで空気を循環させるか、耐熱材というのですかね、そういったものをエキゾーストとクルマの間に挟むか、というところなのですが、そうしたものをつければつければ車重が嵩んでしまいますので、エンジニアやデザイナーサイドにとってはあまりしたくないことでしょう」

 しかし、車内温度の上昇はクルマを走らせるクルーたちのパフォーマンス低下につながってしまう。このことを勝田は自身に起こったことを例に挙げて説明した。

「今回のSS12“アマランテ1”という全長が37kmあるステージでのことです。それまでも暑さは感じながらもトレーニングをしてきただけあって『大丈夫だな』と感じていました。ところが、(スタートから)10kmくらい走ったところで、頭上のベンチレーターという風を取り込む配管からまったく風が入ってきていないことに気がついたんです」

「そのときはステージ開始前に間違えて閉めてしまったのだと思っていて、約10km地点で一度上を見て確認したのですけど全部開いていました。結果的にはフィルターが外から入ってくるグラベルで全部詰まり、まったく風を通さない状態になっていました」

「あのときは本当に『ちょっとやばいんじゃないか』『走りきれるかな?』というくらい暑くて、レースとラリーを全部含めた上で初めて自分の中で集中力の低下を実感しました」

「なんとか残りの27kmを走り切りましたが、最後の方はほとんど覚えていなくて、ただペースノートを聞きながらそれに従って走るだけの状態。フィニッシュからおそらく3つ手前のコーナーでコースオフしかけましたが、そのときもう完全にぼーっとして、ブレーキを掛けないといけないところでブレーキペダルを踏めていませんでした。フィニッシュ後もクルマを降りてからはフラフラして立てないような感じでしたね」

 車内に熱源を抱え従来のクルマよりも過酷な環境となっているコクピットにおいて、ベンチレーションがクルーの“命綱”になっていることを身をもって理解した勝田。彼は以降のグラベルラリーでも同様のケースが起きることを予期しつつ、今後見直していかなくてはならない部分であると感じている。

「おそらく他のグラベルラリーでもああいったことが起きるので、ベンチレーションにダストが詰まってしまうことも含めて改善していかないといけないと思いました。僕たちにとっては本当に命綱なので、そういったところが今後課題になると感じています」

ダスト(砂埃)はクルーの呼吸や視界に影響を与えるだけでなく、ベンチレーションを詰まらせるという事態をも引き起こすやっかいな存在
ダスト(砂埃)はクルーの呼吸や視界に影響を与えるだけでなく、ベンチレーションを詰まらせるという事態をも引き起こすやっかいな存在


関連のニュース