「ラジエーターの問題自体は午後の1本目(SS14)で起きたのですが、実際にこの問題がちょっとずつ起こりはじめたのは午前中でした。土曜日朝の2本目のステージ(SS11)のジャンクションのところでターマックのエッジ部分に引っかかり、クルマがストールしてしまった瞬間がありました。その時に引っかかったのがフロントバンパーで、それによってバンパーは大きく壊れてしまいました」と説明した勝田。
「その時はラジエーター自体にはダメージはなかったのですが、バンパーに付いているカーボンパネルやパーツなどがバキバキと割れていき、(ステージを)走るごとにそれが悪化していって……」
「もちろん応急処置はしたのですが、午後の1本目ですね、ウォータースプラッシュに入った時に水圧でバンパーがラジエーターの方向に力が掛かってしまい、その時にカーボンパネルがラジエーターに突き刺さってふたつの穴が空きました」
「それがステージエンドだったのでゴールまで走って、フィニッシュ後に穴の位置を確認し、修復をすることでなんとかラリーを継続できたという感じです」
「ただ、ダメージを負ってしまってからはバンパーもほとんど壊れて機能していないような状況だったので、ウォータースプラッシュだったり、ジャンプやちょっとした石でも乗り越えてしまうと同じようにラジエーターにダメージを与えてしまうので、そういった部分は非常に注意深く走らざるを得ず、結果的にペースを大きく落としてしまいました」
■とても重要なフロントバンパーの働き
損傷したフロントバンパーを外して走行することは不可能だったのか、との問いに対し勝田は選択肢としてはあったが、それによって増大するリスクを考慮して着けたままの走行を選んだと話した。
「もちろん、ひとつの選択肢としてはあります。ただし、このようなラフなグラベルラリーでバンパーを外すということはラジエーターに直接、岩や石が飛んでくる可能性がより多くなります」と説明した勝田。
「バンパーもそうですが、バンパーの前に網が付いています。あれは虫などを避けるためだけでなく(グラベルラリーでは)岩が結構飛んでくるので、そういったものを直接ラジエーターに当てないために付けてるものでもあり、そのために実は見た目以上に強化されています」
「なので、まれにヒョンデのクルマでトラブル等によってバンパーが外れてしまっている状況がありあますが、あれは実はものすごくリスクがあるんです」
「僕たちが(アクシデント後に)考えた時、バンパーを着けていたままのほうが、まだ全体のリスクとしては低い。壊れたバンパーのパーツがふたたび刺さったりだとかそういったリスクも考えられますが、(バンパーがあれば)落ちている岩が飛んでくる危険は防げるので、そちらの方向に振りました」
「もちろん最後のロードセクションだけであれば外して走ることも可能なんですが、まだ3つステージを残していたというところで、バンパーを外すという選択はその時点ではありませんでした」
有力選手たちも次々にクラッシュやトラブルに見舞われ“サバイバル”の様相を呈したラリーを生き残り、着実にポイントを積み重ねた勝田/ジョンソン組。ラリーの最後にはパワーステージで5番手タイムを記録して見せた彼らの次なる戦いは、昨年勝田が総合2位表彰台を獲得したWRC第6戦サファリ・ラリー・ケニアだ。
