DTMドイツ・ツーリングカー選手権で使用した2リットル直列4気筒TFSIエンジンと、ABB FIAフォーミュラE世界選手権で培ったEV技術を組み合わせたシリーズハイブリッド式のパワートレインについても効率化が図られた。
アウディRS Q e-tron E2の電動ドライブトレインは、内燃エンジンと発電機から構成されるエネルギーコンバーター、高電圧バッテリー、前後アクスルに搭載された2基の電気モーターから構成されている。これらを制御するシステムは、初参戦した2022年のダカールラリーでその真価を発揮した一方、ある状況においては問題も発生した。
そのひとつがジャンプ中や起伏が非常に激しい路面において、ホイールが地面と接しない状況だ。このとき短時間ではあるものの、レギュレーションで定められている出力制限の上限値を超えるという問題が発生していた。これを解消するため、アウディはふたつの個別の出力制限値を数ミリ秒以内に再計算し、出力の限界値内で正確に作動させる新しいオペレーション・ソフトウェアを導入した。
ソフトウェア/アプリケーション/テストベンチ開発エンジニアのフローリアン・ゼムリンガーは、「以前は特定の状況下において、許容範囲に対して毎秒100倍以上のエネルギーがモーターに流れていた」と説明した。
「単純に、しきい値を数キロワット低く設定することもできたが、その場合、全体のパフォーマンスが低下してしまう。その代わりにパワーコントローラーに数多くのファインチューニングを施すことにした」
制御システムを最適化したことにより、電動ドライブトレインの効率はさらに向上することとなった。このほかにも第2世代のアウディRS Q e-tronはコックピット内での操作性と、アクシデント発生時のホイール交換の作業性が改善されている。
具体的には、コクピット内のディスプレイとコントロールが見直され、これまでひとつに集約されていた機能を、ステージ、ロード、エラー、セッティングという4つのシステムエリアに分けることで、状況に応じた操作性が向上した。
また、タイヤ交換の作業性については、スペアホイールカバーを以前の大きなカバーに代わり、シンプルかつフラットで簡単に取り外しができるボディコンポーネントに置き換えたことで、よりスムーズな交換作業を可能としている。ロティフォームの新しい10本スポークホイールもこれに寄与する。

アウディスポーツ・ビークル・オペレーション責任者のウーヴェ・ブリューリングは「私たちは、これまでに得られたすべての重要な教訓を、非常に短い時間でまとめた」とコメント。
「E2への進化は、アイデアの結晶だ」
「私たち開発チームの断固たる決意と、コスト効率の高い作業により、2回目のダカールラリーに参戦するための完璧な準備が整った」
そのアウディRS Q e-tron E2は、10月1日から6日にかけて開催される『ラリー・ドゥ・モロッコ』でのデビューが予定されており、今年のダカールラリーを戦ったサインツ、ペテランセル、エクストロームという3人のアウディドライバーが、北アフリカ南西部で行われる砂漠のラリーに挑む。


