翌年には正式なワークスドライバーとしてシトロエン・トタル・アブダビWRTの一員となり、新型『C3WRC』のステアリングを託されたが、参戦したラリーでは連続5位入賞など一定の戦績を残したものの、2018年第2戦スウェーデンでの2位表彰台を最高位に、ついに勝利を飾ることはなく。アブダビの撤退とともにシトロエンからの離脱を余儀なくされた。
2019年以降、新興ラリークロス・シリーズ『TitansRX(タイタンRX)』にもチャレンジする傍ら、シトロエン時代は僚友クリス・ミークの相棒を務めていたネイグルと再コンビを結成し、ヒョンデ・シェル・モビスWRTからパートタイム参戦の機会を得ると、在籍3年間で出走した9戦のラリーで4回の表彰台を獲得する。
この活躍を足掛かりに、今季2022年にはMスポーツ・フォードWRTと2年契約を結び、32歳にして晴れて“実質的に初のフルタイム参戦”となるワークスシートを手に入れた。
「僕のキャリアは『フォード・フィエスタS2000』でSWRCに勝つ前に、JWRCを制覇した『フォード・フィエスタR2』で始まっているから、フォードはいつも僕の心に非常に近いものだった」と、チーム加入に際して話していたブリーンだが、開幕モンテカルロ直前のテストでは崖下転落の大クラッシュも喫し、本戦ではローブ、オジェの両“レジェンド・セブ”に先行され3位表彰台に留まる。以降、イタリアでの2位表彰台を最上位に、まだWRC初優勝には手が届かない状況が続いている。
前戦ラリー・スペインでは、相棒を務めたネイグルがWRCからの引退を表明し、続く今季最終戦ラリージャパンに向けては、新たなコドライバーとして30歳のジェームス・フルトンを起用する。
「ここ数年間の彼の仕事ぶりには感謝しなければならないし、彼の妻キャシーにも感謝しなければならない。ポールが僕と一緒に旅に出ている間、彼女は家事全般をこなして、ふたりの子どもの面倒も見てきたんだ。つまり僕は、彼の家族全員からサポートを受けていたことになるんだからね」と、長年の相棒に謝意を述べたブリーン。
来季に向けてフォード・プーマ・ラリー1を「自分好みのファクトリーカー」に仕上げるべく仕事が山積する状態だが、それよりさらに遠い未来には、自身のライフワークでもある「もっとヒストリックなことをやることになるだろうから、ポールとの再会も長く待つ必要はないだろうね」と予想する。
生粋のラリー好きとして、自身のコレクションにはかつてフォード黄金期を支えたエスコートMk2やシエラ・コスワース4×4を所有し、そしてフォード復帰を決めた直近にはエスコートWRCもラインアップに追加。イタリアで開催されたラリー・レジェンドにも出場する熱の入れようだ。
「僕のヒーローカーは『MGメトロ6R4』だ」と語るブリーン。アイルランド出身者らしい豪快なサイドウェイ走法と、感情的な人柄を持つ遅咲きのファクトリー契約ドライバーは、中部地方のターマックステージでどんな走りを見せてくれるだろうか。


