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 エンジン自体はWRカー最終年の21年に投入した新設計ヘッドを持つユニットを継承しており、化学合成&バイオ由来の新燃料対応の燃調マップとし、システム合計で514PS/600Nmのアウトプットを誇る。

 そして注目の車体は、FIAインスティテュートが開発したセーフティセルを組み込み、完全自社設計の鋼管スペースフレームを選択。サスペンション設計でもジオメトリー設定の自由度を持たせることが可能となったが、その足回りは最大270mmのストローク規制に合わせてか、リヤ側アップライトのダンパー接続位置を見直しつつも、フロント側は『フォーカスRS WRC05』時代から続く傾斜配置を踏襲するなど、これまで培ってきたノウハウを活かす設計とした。

 一方、2017年以降のWRカーでも重要度を増していた空力デザインは、今回のラリー1で適用されるスケーリング規則も活用し、この『プーマ』ではベース車のボディライン下部を大胆にカットした上で、ルーフ後端がなだらかに下がるティアドロップ的なプロポーションを持つ。そこへ『フィエスタ』時代からトライしてきたリヤフェンダーのキックアップラインや、翼端版両脇にミニウイングを搭載したリヤウイングなど、こちらも蓄積されたデータを最大限に活かそうという思惑が見える。

 ライバル陣営のどこよりも早く、この新規定車両の開発とテストを開始していたMスポーツは、こうした設計思想と熟成期間の甲斐あってか、開幕戦モンテカルロで起用した“ナイン・タイムス・チャンピオン”ことセバスチャン・ローブが、ラリーオープニングから「ほとんどセット変更も加えず」にデビューウインを飾るなど、栄えあるラリー1規定初代ウイニングカーの称号も手にした。

 しかしチャンピオンシップが進むにつれ、チームの開発資金力によるリソース不足も露呈し、同じくローブが出場したアクロポリス・ラリーでは、かつて「アクロ(悪路)を制すものは、世界を制す」と言われた格言を悪い方向で体現するかのように、デイ2までワン・ツー体制を構築しながら、最終的にマシントラブルで全滅という厳しい結果に終わっている。

 各陣営でハイブリッドブーストの使いこなしとマッピングの最適化が進んだ結果、終盤戦はターマックラリーでの優位性も薄れつつあるが、直前でアドリアン・フルモーの欠場をアナウンスし、2台体制となったMスポーツ・フォードWRT製のマシンは、ラリージャパンのステージでどんな走りを見せてくれるだろうか。

エンジン単体で380PS/420Nm、ハイブリッド出力で100kW(約134PS)/180Nmを発生する
サスペンションストロークには最大値規制(270mm)が設けられたが、フロント側はフォーカス時代から採用するレイド由来のレイガー製ダンパーを傾斜配置とする
ターマックでのハンドリングの優秀さは実証されているだけに、ラリージャパンでも一矢報いたいところだ

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