更新日: 2022.11.18 23:29
GRヤリスでWRCラリージャパンに挑んだトヨタの勝田範彦、アクシデントを乗り越え完走果たす
12年ぶりに復活のラリージャパン
勝田/木村組がアクシデントを乗り越え完走
11月10日(木)~13日(日)にかけて、愛知県・岐阜県を舞台に2022年シーズンのWRC世界ラリー選手権第13戦『フォーラムエイト・ラリージャパン 2022』が開催され、TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)の勝田範彦/木村裕介組は競技3日目に横転を喫したものの、車両を修復して最終日に再出走を果たし、完走を果たしました。
モータースポーツの厳しい環境の下で「人を鍛え、クルマを鍛える」ことを目的に、2015年から全日本ラリー選手権に参戦するTGR。GRヤリスをベースとする『トヨタGRヤリスGR4ラリー』を2021年から投入し、最上位カテゴリーであるJN1クラスに挑戦しています。今回、12年ぶりにWRC日本開催の実現を受けて、チームはトヨタGRヤリスGR4ラリーを国際格式規定に合わせ、ラリージャパンへの参戦を決めました。
これまでのモータースポーツ参戦を通じて得られたデータや知見をもとに、チームはJRC全日本ラリー選手権の終盤戦と並行してWRC参戦に向けた車両を準備。ターマック(舗装)仕様をベースにFIAの安全規定に準拠した仕様とし、チームのエースである勝田選手にトヨタGRヤリスGR4ラリーを託しました。
2022年のWRCラリージャパンは、愛知県と岐阜県にまたがるエリアで開催。舗装された林道を中心に19のスペシャルステージ(SS・タイムアタック区間)が設定されました。4日間の総SS走行距離は283.27kmにもなり、JRC最大規模の大会であるラリー北海道の倍以上の距離を誇ります。クルマやタイヤだけでなく、クルーやチームにとっても非常に厳しい戦いとなることが予想されました。
10日金曜日、ラリーはサービスパークが設置された豊田スタジアムでのセレモニアルスタートで華々しく幕を開けました。多くの選手が曲がりくねった狭いSSに苦戦し、アクシデントやトラブルが多発するなか、勝田選手は確実なペースで走り切り、2日目を終えてWRC2勢に割って入る総合18位、ナショナルクラスの首位につけました。
順調なペースで走行を続けていた勝田選手でしたが、11日土曜日のSS12で横転。フロントガラスを破損するなど車両のダメージは大きく、その日の競技続行を諦めざるを得ませんでした。しかしチームは車両の損傷箇所を修理し、最終日にふたたびトヨタGRヤリスGR4ラリーを出走させることに成功。雨となった最終日、勝田選手はフィニッシュまでトラブルなく走り切り、チームに貴重なデータを持ち帰りました。
■豊岡悟志(TGRチーム監督)
「まず勝田選手、木村選手が、アクシデントを乗り越えて完走を果たしてくれたことをうれしく思います。アクシデント後、モリゾウさんから、『ノリさんが走りたいと言ったら、ぜひ走らせてほしい。これもドライバーファースト。』と早朝に直接お電話いただきました。おかげでノリさんを更に理解、知ることができ、大変勉強になりました。勝田選手、木村選手には本当に感謝します」
「今回のラリーでは“WRC基準”を経験できた点も大きかったと思います。色々な気づきを得られ、本当に良い経験になりました。サービスパークでは多くの皆さんに応援していただき心強く思いましたし、この盛り上がりを今後につなげられるよう、我々も何か貢献できることがないか、あらためて考えさせられたラリーでした。タカ、表彰台おめでとう!ありがとう!!」
■勝田範彦(ドライバー)
「トヨタGRヤリスGR4ラリーはとても良いフィーリングで、序盤から好ペースで走ることができたのですが、思わぬところに落とし穴がありました。自分としても反省点が残るラリーだったと思います」
「リタイアしてもおかしくない状況でしたが、チームがクルマを直してくれました。だからこそ、応援してくれる皆さんやチームのためにも絶対に完走したいと思いましたし、頑張ろうと思って走りました。もともと家族のようなチームですが、このラリージャパンで、さらにみんなの想いがひとつになったと思います」
「そして、タカ。3位おめでとう! プレッシャーも大きかったはずですが、子どもの頃から大きな大会に強いタカのことですし、僕みたいなポカはやらないと思っていたので(苦笑)、本当に良かったです」
■坂本祐樹(エンジニア)
「まず、最終日のゴールまでトヨタGRヤリスGR4ラリーを走らせていただいたクルーに感謝しています。今回は出走前の車検から、チームとして反省することが多い、学びのたくさんあるラリーになりました。とくに、FIAの車検では安全に関するチェックを細部まで行い、なによりもクルーの安全が最優先されていることを実感しました」
「車両の修復作業では、今大会のルールの作業時間(上限3時間)を意識し、我々エンジニアもメカニックに加わりながら取り組みました。競技面においてはSSの距離が非常に長く、我々がこれまでテストでも経験したことのない領域に踏み込んだこともあり、車両にもやはりダメージがありました。車両を拠点に持ち帰って、どの部分に何が起きているのか、さらに細部までしっかり検証したいと思います」
■丸田智(チーフメカニック)
「アクシデントを乗り越えて走り切った勝田選手は、さすがプロだとあらためて感じました。これまでもチームを引っ張り、鼓舞する姿を何度も見せていただきましたが、その姿勢は我々の刺激になり成長に繋がってきました」
「メカニックもこれまで積み重ねてきたことを、WRCの舞台で発揮できるようにと取り組んできましたが、全日本ラリー選手権と並行しての準備はひと筋縄ではいかず、行き届かなかった部分が出てしまったことは反省し、今後に活かしていきます。又、WRCの厳しい環境下で走る人たちの仲間に入れて頂いたことで、“世界基準”を肌で感じとることもできました。こうした点を、今後の活動に活かしチームとして大きく成長させていきたいと思います」
■フォーラムエイト・ラリージャパン2022 ナショナルクラス最終結果
Pos. | Driver / Co-Driver | Car | Gap |
---|---|---|---|
1 | 柳澤宏至/保井隆宏 | トヨタGRヤリス | 3h09’27.0 |
2 | 佐々木康行/中嶌杏里 | トヨタGRヤリス | +7’30.2 |
3 | 山本悠太/立久井和子 | トヨタ86 | +11’50.8 |
4 | 勝田範彦/木村裕介 | トヨタGRヤリスGR4ラリー | +27’52.0 |
5 | 相原泰祐/萩野司 | ダイハツ・コペンGRスポーツ | +38’47.0 |
参戦5台、完走5台