これにより、予選ヒート2でバトルからの損傷を負って敗退を喫していた選手権首位RXRとの直接対決構図が整うと、この敗者復活ではくっきり明暗が分かれる展開に。ふたたびマシンにダメージを負ったヨハン・クリストファーソン/ミカエラ-アーリン・コチュリンスキー組のマシンは、なんとかレースへの復帰を試みるべくスイッチゾーンで懸命の修復作業を実施するも、クルーの上限人数を超えた作業で失格処分となり、トラブルで落とした前戦に続く失意の結果となってしまう。
この結果、予選首位のヴェローチェ・レーシングやABTクプラXE、プラクティス最速のジェネシス・アンドレッティ・ユナイテッドに加えて、タナー・ファウスト/エマ・ギルモア組のNEOMマクラーレン・エクストリームEらとともに、前戦チリよりエントリー名を改称したX44ビーダ・カーボン・レーシングが、辛くも最終ヒートの出場権を獲得する。
そのX44がポイントリーダー不在のファイナルで逆転チャンピオンを奪うには、少なくとも3位表彰台を獲得する必要があったが、スタートを担当したローブは同じくダカールで覇を競ったアル-アティヤに先行されると、直後にはマクラーレンのファウスト、アンドレッティのティミーにもかわされ4番手に後退してスイッチゾーンに戻ってくる。
後半スティントに向けステアリングを引き継いだグティエレスは、背後のヴェローチェ・レーシングがウェイポイントのフラッグに接触し5秒ペナルティが科されたことで、前を追うことに集中する環境を得ると、前方のマニングスを必死で追う展開に。しかし追い上げてきた初代王者テイラーとの攻防で接触、この衝突が審議対象となり、のちに5秒加算の判断が言い渡される。



逆転初王座に向け残り時間が少なくなっていくなか、4位チェッカーが不可避な状況となったX44だが、ここで前を行くアンドレッティにスイッチゾーンでの速度超過違反が発覚。これに7秒のペナルティが科せられ、マニングスから2秒以内でフィニッシュしていたグティエレスは、わずか0.5秒差で3位に昇格。この最終ポディウム獲得により、たった2ポイント差でRXRを上回ったX44が、初のシリーズチャンピオンを手にする結果となった。
「まだ信じられない気分よ! とくに昨日のロールオーバーの後は、私たちにとって非常にタフな週末になってしまった。チームは(スペアの)マシンでクレイジーな仕事をしてくれたし、予選ヒート2は初めてのドライブだったんだから!」と、ジェットコースターのような展開を振り返る新王者グティエレス。
「決勝に関しては、無線で『誰かがペナルティを受けるだろう』と言われたけど、それでも私は自分たちがチャンピオンになると知らなかった。勝ったことを確認したかったから、公式結果が出るまではお祝いの気分すらなかったし……本当にジェットコースターだったけど、ようやく私たちが達成したことを信じることができた。こんな結末が来るなんて、本当に良かった……」
一方、予選でのファインプレーから決勝では苦しい展開を強いられたローブも「自分たちの持っているものすべてで競い合い、最大ポイントを獲得しようとすることしかできなかった」と、厳しい状況でのタイトル獲得となった。
「決勝では3位に入る必要があったのに、僕が4位に終わってしまった。これが決定的な瞬間だったが、あちこちで接触があり、追い越すためにできることは何もなかったんだ」と続けたローブ。
「それでもクリスティーナは、前のクルマに非常に接近する素晴らしい仕事をしてくれた。(周囲のペナルティで)3位になる可能性があることはわかっていたし、最終的にはそれが必要だったから、ここにいることができて本当にホッとしている。チャンピオンシップに勝てたことを本当に誇りに思うよ」
その前方では、クララ・アンダーソンの慎重なドライブがエマ・ギルモアをミラーに押し留め、アンダーソンはデビュー戦以降の連続表彰台でシリーズ初優勝を獲得。2位のNEOMマクラーレン・エクストリームEにとっても、前戦でトップチェッカーを受けながら、ペナルティにより失意のどん底に落とされたリベンジとなるチーム初表彰台を手にした。
「ワァオ! 正直に言って今、私にはたくさんの感情がありすぎて、なんて表現してよいかわからないほどよ。私はこれを長い間待っていたんだから」と、新加入のABTに初勝利をもたらしたアンダーソン。
「これが私にとっての2戦目で、急遽の参戦でなくフルバージョンの週末を過ごしたのも初めてのこと。表彰台の真ん中を獲得できたことは大きな喜びだし、ナッサーとチーム全体がいなければ、私はそれを成し遂げることができなかったでしょうね」
これでフルシーズン2年目の全日程を終えたExtreme Eは、来季3年目のカレンダーをすでに発表しており、2023年は3月11~12日にサウジアラビアで開幕の日を迎え、スコットランド、イタリア・サルディニアと続き、北米かブラジルでの1戦を経て、ふたたびチリでフィナーレを迎えるスケジュールが予定されている。


