更新日: 2022.12.05 17:39
【ラリージャパン、12年ぶり開催の評価と課題:後編】改善が必要な『一般車の侵入の警備体制』と『潜水士の配置不足』。そして観客視点の観戦エリア
土曜日の最後を締めくくる、岡崎でのSS13/14“オカザキ・シティSSS”では、河川敷での競技開催に絶対必要な潜水士の配置が遅れ、競技開始が1時間ディレイ。結果、2本予定されていたステージのうち1本がキャンセルされてしまった。さらに、未舗装路セクションをラリーカーが走行したことで大量の土煙が舞い上がり、無風状態の時は走っているクルマがまったくといっていいほど見えない状態だった。
どちらも観客にとっては最悪と言えるもので、とくに、チケットを購入して川の対岸から観戦していた観客は気の毒だった。ただでさえクルマとの距離が遠いのに、日没と土煙で視界は非常に悪く、さらには運営の不手際によりSSが1本だけになってしまったのだから。前編でも記したが、その状況でジェントルな姿勢を保った日本のお客さんたちを、僕は心から尊敬する。
岡崎のステージの事件以外にも、観客目線での観戦ポイント設定が十分ではないと思ったステージは少なくなかった。個人的には、木曜日午前中のシェイクダウンに観客を入れなかったことが残念でならない。
シェイクダウンは、たしかにラリーの結果とは関係のないものだが、1本のステージで同じドライバーの走りを3回以上観ることができる、ファンにとっては非常に「お得」で人気のあるセッションだ。一体どのような理由でシェイクダウンを見せないことにしたのだろうか? 数名のWRCドライバーに「なぜSS1には観客がいて、同じ場所でやるシェイクダウンにはいなかったの?」と質問されたほどである。2023年は、是非ともシェイクダウンの観戦チケットを販売してほしい。
■海外ジャーナリストたちから厳しい指摘も
他にも、いくつも改善が必要だと思った点はあった。それでも、個人的には新しい主催チームによる、ブランニューイベントであるが故に、安全に関わること以外はある程度仕方がないと思ったのだが、海外のWRCジャーナリストたちの視点はよりシビアだった。
彼らの意見を要約すると「たとえ、初めて開催するラリーであっても、最初からしっかりとできる主催者は少なくない。彼らは主催者目線だけでなく、選手の目線や、観客の目線でも入念に数多くのWRCイベントを視察して準備を進めてきた。ラリージャパンの主催チームは、その作業が不十分だったのではないか?」となる。
非常に耳の痛い指摘ではあるが、我々日本人は「改善力」には長けている。2023年は主催チームの構造が変わり、豊田市が全体をハンドリングすることがすでに決まっているが、今年見えた問題点をしっかりインプルーブして、素晴らしい大会を実現してくれることを期待したい。