明けた日曜はSS総距離84.28km、4つのステージを午前と午後でループし、世界的に有名な“ペドラ・センタダ”のビッグジャンプも設定されたが、前日にタイヤにダメージを負って後退したブリーンがここで奮起。SS10で発生したパワーステアリングの問題も克服し、SS11からの3連続と最終パワーステージも制してみせる。
一方、同じく好調さを披露したのがニュージーランド出身“Kiwi”のパッドンで、序盤にオストベルグを捉えて総合2番手に浮上すると、首位ヘイッキラに対し最終SSを残して2.8秒差まで詰め寄ってくる。
現APRCアジア・パシフィック・ラリー・チャンピオンでもあるパッドンからのプレッシャーも響いたか、フィンランド王者がフィニッシュラインからわずか5km足らずで左フロントタイヤのパンク交換で停止したとき、2023年ERC開幕勝者の栄光はパッドンの手に渡ることとなった。
「(パンクの原因は)分からない」と、このタイムロスで総合8位に終わったヘイッキラ。「石がたくさんあったからパンクはしやすいけど、ミシュランタイヤには満足している。泣いても何の役にも立たない……それが現実だ。僕のチームに感謝したいと思うし、彼らは非常にうまく機能した」
一方、初のERC本格フル参戦初戦を制し、ヨーロッパ選手権で勝利を飾った最初のヒョンデ契約ドライバーとなったパッドンも「ヘイッキラには申し訳ない」と謙虚な言葉で応じた。
「僕らは今週末、完全に最速ではなかったが、ラリー全体を通して一貫してそれを維持するペースがあった。過去の経験から、すべてのステージで速くなければならない……というゲームでないことを学んだんだ」と、35歳で自身ERC初優勝を手にしたパッドン。
「プッシュしたがリスクを冒すことはなかった。それが週末全体の哲学であり、スピードを選んでそれを維持し、今日はそれがうまくハマっただけさ。ポーランド、ラトビア、スウェーデンに行くと、彼ら若い選手たちは非常に速く、全速力のとてつもない勢いで走る。僕たちもそれに追いつく必要があるね」
こうして70周年のシーズンが幕開けを迎えたERCは、続く5月4~6日に第2戦『ラリー・イソラス・カナリアス』の開催を予定。ここではSS総距離190.06kmのターマック全13ステージが争われる。

