チーム力に関しては、若い組織をうまくまとめ、そしてドライバーのメンタル面も上手にコントロールしたマキネンの力量による部分が大きい。マキネンは、精神的にややアップダウンが大きいヤリ-マティ・ラトバラに対し、ドライバー視点でのアドバイスを要所要所で与えている。
ある時は「タイムは気にせずリラックスして走れ」と気持ちを落ち着かせ、またある時はラリーを大きくリードしていても「スピードを緩めず最後まで全開でアタックし続けろ」と鼓舞する。その絶妙な忠告が、ラトバラから本来の速さを引き出したといえるだろう。

ラトバラはフォルクスワーゲン時代最後の去年、自分に合わないマシンと精神的なプレッシャーで最悪のシーズンを過ごした。しかし、自分と似たドライビングスタイルのマキネンが開発を指揮したヤリスWRCを得て息を吹き返し、マキネンの精神的な後ろ盾でエクストラの力強さを身につけた。ラトバラは「失っていた自信を取り戻すことができた」と、スウェーデン後に心からの笑顔を見せたが、ドライバーの潜在能力を引き出す術こそが、マキネン最大のマジックなのかもしれない。

ただし、セカンドドライバーで、ヤリスWRCの開発テストを担当してきたユホ・ハンニネンが、2戦連続でクラッシュしてしまったのは少し残念だ。彼は実はWRカーでの実戦経験がそれほど豊富ではないため、現在は経験値を高めている段階だともいえる。この先、マキネンがどのようにしてハンニネンの力を引き出していくのか、その手腕にも注目していきたい。