明けた土曜から午前午後で3ステージをループするSS総距離108.03kmの勝負が始まると、先頭走者のカイスはSS5のスタートを前にレインシャワーに見舞われ、続くステージで大苦戦。午前のフルウエットからダンプ路面へと変化していたステージ上はふたたび水量が変化し、砂利の浮く高速コーナーで左フロントタイヤを損傷してしまう。
同じく「リヤエンドが完全にディッチに落ちた瞬間もあった」と明かしたコペツキーもスリリングなシーソーゲームを展開し、序盤の5ステージで5人のドライバーがリードを入れ替える目まぐるしい展開でラリーが進む。
しかしSS6でベストタイムを叩き出した同戦10勝のマイスターが、同じくSS3ベストのハンガリー出身ミクロス・チョモス(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)に14.9秒差をつけ、最終日に向けて盤石の体勢を整えた。
翌、日曜も同じく3SSのループによる92.40kmのステージが設定されると、前日SS6で優勝戦戦から脱落したカイスが連続ベストを奪うなか、午前最終のSS10で事件が発生。予選ステージでフェンスにヒットして以降、慎重なドライブながら総合5番手につけていた選手権首位パッドンが、ヒョンデi20 Nラリー2の右リヤセクションを失う大クラッシュを喫し、このダメージで即座のリタイアを余儀なくされる。
これにより、年間2勝を挙げて選手権を争うチームMRFタイヤのマルティン・セスク(シュコダ・ファビアRSラリー2)が週末に20点以上を獲得し、タイトル争いの行方を最終戦まで持ち越せるかに注目が集まった。
しかし、この時点での12番手から総合6位以内に浮上し、かつパワーステージでも最大5点のボーナスポイントを加算する必要があったことから、残念ながら条件を満たせず。そのままパッドンがERCの栄冠を掲げた初の“Kiwi(ニュージーランド人)”として、歴史に名を刻むこととなった。
「トラブルがあったなかで今日の勝ち方は不思議だけれど、チームでやってきたことをとても誇りに思っている」と、今季は開幕勝利から4戦連続2位を含む全戦表彰台を続けてきたパッドン。
「良いラリーが6回あり、悪いラリーが1回あった。全体的に見て非常に良いシーズンだったし、これを将来に向けて積み上げていくべきだと思う。今季のERCでの時間はとても楽しかった。さまざまなイベントに多くの課題、そして本物の競争が混じり合っている」
「僕はこれが世界最高のラリー選手権のひとつだと思っているし、できれば将来も参加できることを願っている」
ラリーは、そのSS10でふたたびの最速タイムを奪取したコペツキーが、午後に向けて施したセットアップ変更も奏功し、2位チョモスと3位ワグナーを抑え切ってゴールランプへ。「難しいラリーでとても疲れたが、今はとても幸せだ」と、地元戦11勝目の金字塔を打ち立てた。
これでタイトル争いには終止符が打たれた2023年ERCだが、続く10月6~8日にはゼンプレン北東部のニーレジュハーザを拠点とするターマックイベント『ラリー・ハンガリー』が最終戦として開催される。


