ル・マン24時間レースを除くWECのシリーズ戦では見納めとなるLMP2クラスは、スタート時の混乱からトップに立った10号車オレカ07・ギブソンが序盤戦をリード。3時間目には31号車オレカ(チームWRT)が首位を奪ったが、レース折り返し時点では23号車オレカ(ユナイテッド・オートスポーツ)がクラストップとなった。
その23号車がストップ&ゴーペナルティを受けて遅れを取ると、プレマ・レーシングの9号車と63号車オレカがワン・ツーを築く。6時間目、首位9号車がターン1で98号車アストンマーティン・バンテージAMR(ノースウエストAMR)に追突され3番手に後退。これにより姉妹車63号車とWRT31号車に逆転を許してしまう。
その後もピットインタイミングで順位が入れ替わっていくなか、残り1時間の時点ではチームWRTの31号車と41号車がワン・ツーで並び、クラス3番手にJOTAの28号車オレカが続く。
15分後、3番手の28号車がピットインし、続いて2番手を走る41号車もピットに入りフルサービスでコースに戻った。ロビン・フラインス駆る31号車はラストピットで左フロントタイヤの交換に手間取りタイムをロス。これによって姉妹車41号車に逆転を許してしまう。
こちらも、ハイパーカークラスと同様に最後はチームWRTのワン・ツーが揺るがず、順位そのままにフィニッシュを迎えた。この結果、ランキング首位で今戦に臨んだ41号車のルイ・デレトラズ/ロバート・クビサ/ルイ・アンドラーデ組が優勝とともにドライバーズタイトルを獲得。チームWRTはチームズタイトルも獲得し“2冠”を達成している。

■“女性チーム vs 日本チーム”ともに初優勝をかけた争い
昨年終焉を迎えたLMGTEプロに続き、カテゴリー最後のレースとなったLMGTEアマ。このクラスのドラマのひとつは、マッテオ・クレッソーニが“代打”でスタートドライバー務め、序盤からレースをリードした60号車ポルシェ911 RSR-19(アイアン・リンクス)のトップ独走からのリタイアだった。
スタートからまもなく姉妹車85号車ポルシェ911 RSR-19(アイアン・デイムス)をかわした後、90秒以上のギャップを築いて6時間目まで首位を快走していた60号車だったが、体調不良によってスタートドライバーの役目を果たせなかったクラウディオ・スキアボーニの状態が回復せず。このブロンズドライバーが同車のステアリングを握ることが難しいことから、チームはレース時間が残り2時間30分あまりとなったところでガレージにクルマを戻し、60号車をリタイアさせている。
僚友60号車ポルシェが戦列を去ったあと、“女性チーム”の85号車(サラ・ボビー/ミシェル・ガッティン/ラヘル・フレイ組)がクラス首位に浮上。これを98号車アストンマーティン・バンテージAMR(ノースウエストAMR)が追っていたが、ハート・オブ・レーシングチームが運営するマシンはLMP2車両に追突した件でペナルティを受けクラス4番手に順位を下げる。
これに代わって、レース折返しの時点で藤井誠暢のドライブで4番手につけていた777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)がクラス3番手から2番手にポジションアップ。首位とのタイム差は約15秒だ。
終盤、クラス首位を争う2台はガッティンとキャスパー・スティーブンソンによる戦いとなり、一時は20秒ほどに開いたギャップは残り1時間を切った段階で約10秒に縮まる。その後も777号車のスティーブンソンがじわりじわりと差を詰めていき、フィニッシュまで残り15分の時点でついにその差が1秒台となる。
どちらのチームが勝っても初優勝となる息を呑む攻防は、最後はタイヤの差が出たか、ミディアムタイヤ4本を履くスティーブンソンに対しハード4本で走行するガッティンがふたたび差を拡げていく。スタートから8時間後、歓喜の声はアイアン・デイムスのサインガードから響いた。
今大会、星野敏が欠場したためリアム・タルボットが代役を務めたDステーション・レーシングは、惜しくも敗れたがGTE“ラストレース”でチーム最高位となる2位表彰台を獲得。3位にはノースウエストAMRの98号車アストンマーティンが入っている。
木村武史がスタートから連続3スティントを担当したケッセル・レーシングの57号車フェラーリ488 GTEエボは、エステバン・マッソン、ダニエル・セラと繋いで5位フィニッシュ。ケイ・コッツォリーノが乗り込んだAFコルセ21号車フェラーリ488 GTEエボはクラス11位でレースを終えている。
