ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2024.06.19 18:34
更新日: 2024.06.19 18:36

佐藤万璃音 2024年WEC第4戦ル・マン24時間 レースレポート


ル・マン/WEC | 佐藤万璃音 2024年WEC第4戦ル・マン24時間 レースレポート

WEC第4戦、人生初のル・マン24時間耐久。佐藤万璃音は勝利を激しく渇望するも、残り4時間でマシントラブルに泣く。

 今シーズンよりヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)に加え、新たに世界耐久選手権シリーズ(WEC)への挑戦を開始した佐藤万璃音(UNITED AUTOSPORTS USA 所属、神奈川県出身・25歳)が、6月15〜16日にフランス、ル・マンのサルト・サーキットで開催されたWEC第4大会『第92回ル・マン24時間レース』に参加しました。

 95号車マクラーレン720S GT3エボを駆る佐藤万璃音は、僚友ニコラス・ピノ選手に加え、このレースで新たにブロンズドライバーとして濱口弘選手を迎え、予選19番手から人生初の24時間耐久レースという長丁場に挑みました。

 レースはスタートドライバーの佐藤万璃音が序盤の混乱を巧みにすり抜けポジションアップ。ストレートスピードの速いポルシェ勢をオーバーテイクするために、予定よりも2周早くピット作業に入ってアンダーカットに成功。

 そのままハイペースでコンスタントな周回を重ね、チームからの指示もありフルプッシュでポジションをアップ。自らのスティントを終えてピットに戻った段階で、早くも6番手まで順位を上げてドライバー交代を終えることができました。

 長いレースということもあって、各チームともさまざまな戦略を繰り広げるなか、95号車マクラーレンは、スタートから早い段階でゴールドドライバーの佐藤万璃音がポジションを上げ、その後、日没に向けてブロンズドライバーの濱口弘選手、シルバードライバーのニコ・ピノ選手、そしてふたたび濱口弘選手とつなぎ、夜間の難しい時間帯を佐藤万璃音とニコ・ピノ選手でつないでいくという戦略でした。

 しかし予想以上に荒れた展開のレースとなり、さまざまなアクシデントやトラブルがチームを襲います。

 途中、2度の単独スピンや、ハイパーカーとの接触があり、ドライブスルーペナルティや20秒のピットストップペナルティを受けてしまい、周回遅れにされる場面もありましたが、その都度、佐藤万璃音がコンスタントに速いラップを刻んで再びポジションをアップ。

 セーフティカーのタイミングもチームに味方して、同一周回に戻すどころかそのまま次々と前を行くマシンをパスし、再びトップ争いを展開するポジションまでリカバーしました。

 レース中盤から終盤にかけては、同じユナイデッド・オートスポーツの59号車とともに参加23台のLMGT3クラスのなかでつねにトップ3を争うポジションで、初勝利へ向けてチームが一丸となって戦っていきました。

 ドライ路面でスタートしたレースでしたが、夕方、深夜、明け方、フィニッシュ前と何度も雨に悩まされ、たびたび導入されたセーフティカーによって最後まで展開の読めないレースとなった今年のル・マン24時間耐久レースでした。

 95号車は夜間の雨でセーフティカーが長時間入ったタイミングで、急遽、休んでいた濱口弘選手を投入してブロンズドライバーのドライブタイムを消化する作戦に転じましたが、夜明け前、レース再開直後の乾ききらずに濡れた難しい路面コンディションのなか、ベテランの濱口弘選手が全体の3番手に匹敵するハイペースで飛ばしに飛ばし、佐藤万璃音にバトンタッチ。残り8時間、トップ3圏内で、優勝を見据えて激しくラストチャージすることとなりました。

 しかし、残り4時間53分というところでマシンに不調をきたし、ピットイン。駆動系のトラブルが発生しており、万事休す。212周を終えた段階で、95号車は無念のリタイアとなってしまいました。

佐藤万璃音 2024年WEC第4戦ル・マン24時間 レースレポート
95号車マクラーレン720S LMGT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ) 2024年WEC第4戦ル・マン24時間

■佐藤万璃音のコメント

「まるでジェットコースターに乗っているような、休む間もなくアップダウンが激しく続いた、僕にとって初めての刺激的なル・マン24時間でした。予選では細かな問題が発生してしまい、ストレートのスピードが伸びず19番手に終わってしまったことで、ブロンズドライバーの濱口弘選手にハイパーポールを戦ってもらえなかったのが残念でなりません」

「スタートドライバーは自分が務めたのですが、ストレートでポルシェが圧倒的に速くて抜ききれないのがわかったので、作戦を変えて2周早くピットインしてアンダーカット狙いでいったのが成功し、フルプッシュで6番手まで上げて交代しました」

「そのあと1時間くらい眠ってピットに戻ると周回遅れになっていて驚かされたのですが、また自分がコースインしてフルプッシュ。セーフティカーのタイミングとかも有利に働いて同一周回に戻して、さらにどんどん前を抜いて勝利を争えるポジションまでアップしてバトンタッチ」

「チームのモーターホームでは自分のオンボード映像が常時流れていたそうなのですが、チーフエンジニアも『データを見るより万璃音の走りを観ていたほうがエキサイティングだったよ』と声をかけてくれて、自分の仕事にみんなが喜んでくれました」

「レースは長いだけにいろいろあったのですが、海外レースで実績を持ち、ル・マンのサルト・サーキットでの経験もある濱口弘選手が、ブロンズドライバーのなかではダントツに速くて本当に助かりました」

「セミウエット路面の難しいコンディションのなかでは、ライバルチームのゴールドドライバーを相手に全体のトップ3くらいの速さで周回を重ねてくれました。自分のほうがGT3での経験は少ないですが、ゴールドドライバーとしてチームを引っ張っていく立場として、本当に濱口弘選手を敵に回さず、味方として走れたことが良かったです(笑)。ふたりのチームメイトは本当に信頼できるチームメイトでしたし、最高でした」

「今回のレースはペースも良く、ラスト数時間までずっとトップから3番手以内で戦っていましたし、ライバルたちを見据えても正直、勝てると思ったレースだけに本当に悔しいです」

「自分も含め、3人のドライバーは最高でしたし、メカニックたちも一度もミスすることなく、完璧な仕事をしてくれました。エンジニアの指示も的確でしたし、戦略もばっちりでした」

「でもレースは残酷ですよね。駆動系トラブルの原因はまだわかっていませんが、もう1台も同じようなタイミングで止まってしまったので、本当に残念です」

「それでもLMP2クラスで自分がELMSで一緒に戦っているユナイテッド・オートスポーツの仲間がクラス優勝を果たしてくれたので、自分のことのように嬉しかったです。チームとしても最高の結果でした」

「ル・マン24時間はWECシリーズの1戦ではありますが、年に一度しかない特別なレースですし、本当に次は勝ちたいです。もちろん誰もが勝ちたいと思って参戦してくるレースですが、この悔しさを思い出にだけはしたくない」

「間違いなく、次のレースでも結果を残して、その先のレースも頑張って、また来年、このル・マン24時間の場で、あの表彰台に立ちたいと思います。皆さん応援ありがとうございました」

2024ル・マン24時間
95号車マクラーレン720S LMGT3エボをドライブするニコ・ピノ、濱口弘、佐藤万璃音


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