――昨年、ル・マンでは強豪トヨタ破り総合優勝を果たしたあなたですが、WEC/ル・マンのトップカテゴリを舞台に戦うトップドライバーとして、それと並行してGTレースへも参戦する意図は?
APG「ハイパーカーとGT3を短期間の内に乗り換えることは必ずしも容易ではないし、そのフィーリングに対応するには数ラップを要する場合だってある。だが、このチャレンジは僕が望んで行っていることであり、プロのドライバーであるからこそ、メインのハイパーカーの他にも高いコンペティションの場に身を置き、ドライバーとしてのスキルをより高めるには絶好の機会だと思っている」
APG「フェラーリはF1からハイパーカー、GTまでさまざまなカテゴリに参戦しており、僕たちフェラーリのワークスドライバーにはシーズンによってはF1のリザーブをしながらGT3のレースも参戦するドライバーもいる。プロドライバーにとって、どのカテゴリのマシンをドライブしても順応性があり、いつでもポテンシャルを発揮できるというのはとても重要視されるスキルのひとつであり、僕としてはシーズン中に複数のカテゴリを掛け持ち参戦することはポジティブに捉えている」
――ところで、WEC/ル・マンでは今季はより多くのマニファクチャーが増え、よりコンペティティブになりましたね。
APG「ライバルが増えるということは、チャンピオンシップにとっても、参加する者にとってもとても良いと思っているし、さらに参加するメーカーも増える予定であり、将来を見据えるとWECのこの賑わいはとてもポジティブに捉えている」
APG「フェラーリはチャレンジを好み、ライバルが多ければ多いほど闘争心も沸く。もちろん、主催者側にとっても喜ばしいことだろう」

■サンパウロから始まるWEC後半戦に向けて
――WECはアップダウンなシーズンですが、ブラジル戦(サンパウロ6時間)を迎えるにあたって前半戦を終えた感想は?
APG「イモラではいわゆる『バッドチョイス』をしてしまい、勝てる見込みのあったレース、それもホームレースでまんまとそのチャンスを失うという失敗もした」
APG「しかし、これもモータースポーツだ。シーズンは続いていく。あの時の失敗を経てル・マンでは姉妹車の50号車フェラーリ499Pが優勝できたし、僕たちは総合3位でポディウムに立てた。この調子で後半戦ではコンスタントにポイントを重ねるべく努力していくつもりだ」
――WECのマニュファクチャラーのポイントランキングでは、ル・マンを終えた時点でポルシェに次いでフェラーリは2位。1位のポルシェとは9ポイント差、3位のトヨタとは3ポイント差と上位3メーカーが非常に接戦状態ですね。
APG「この上位3メーカーはほぼ同じポテンシャルを持ち、非常に近い位置にいる状態だ。僕たちフェラーリはシリーズチャンピオンを獲得することしか考えていないし、それだけを目標としている」
APG「それだけに、ブラジル戦から最終戦バーレーンまで、ハイパーカークラスではさらに激しい戦いが予想されるが、僕たちは与えられた仕事を確実にこなすだけだ」
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スパ24時間レースでは、残り50分を切った時点でアレッサンドロ・ピエール・グイディがドライブする51号車のフェラーリ296がピットインに入った際に、先にピットインをしていたランボルギーニが立ち往生するという思わぬアクシデントが彼らを襲い、総合優勝を目前に5位まで転落した。最終スティントを担ったグイディは諦めることなく鬼気迫る追い上げをし、総合2位でチェッカーフラッグを受けたものの、悲願だった優勝を逃した。
勝者となったアストンマーティンの隣でマシンを降りたピエール・グイディは、怒りや諦め、不甲斐なさからか放心したような表情だった。「昨年のル・マン24時間レースの100周年で勝利を挙げ、スパの100周年でもどうしても勝ちたかった」と最後に言葉を残して記者会見の場を去った。
