そんななか、モクのスティントで入ったセーフティカーランの間の燃費計算に誤りがあることが判明。澤は燃費走行を強いられることとなった。
しかし、チームはフルコースイエロー(FCY)が出る可能性もふまえ、作戦の変更を決断。全開走行に切り替えた澤は上位とのギャップを縮め、最終スティントを担当するグリフィンにバトンを繋いだ。

アンカーのグリフィンは2番手でコースに戻ると、クラストップを走る98号車アストンマーチン・バンテージを猛追し、テール・トゥ・ノーズのバトルの末、オーバーテイクに成功。終盤に61号車フェラーリがクラストップに浮上した。
しかし、期待していたFCYが出なかったため、61号車は最後に給油をしなければならず、ラスト5分でピットインすることに。
61号車は給油を済ませると2番手の直後の3番手でコースに復帰。98号車バンテージ、54号車フェラーリ488、61号車のトップ3台が5秒以内の差で連なるなか、レースはファイナルラップに突入した。

このラップで逆転優勝を狙う54号車が、15コーナーでトップの98号車のインに飛び込むと2台は接触。3番手を走る61号車は接触によってスピンを喫した2台の合間を抜けると、そのままトップチェッカー受け、シリーズデビュー戦でクラス優勝を飾った。

劇的な勝利に「一夜明けたけど、まだ信じられない」と澤。
「チームも僕もWECフルシーズンに向けて妥協なく準備をしてきましたが、まさかこんなにうまくいくなんて……という気分です」
「どういう戦いをしたら勝てるか、というイメージができたのでの、今回は表彰台でOK! と思っていた矢先のことでした」
「チェッカーの直前は映像を見られなくて、タイミングモニターの一番上に自分たちがいきなり上がったときは『マジか! 何が起きた!?』という感じでしたね」
「今回のレースは『何回か表彰台に登る』という当初の目標から『何度か勝って、ダメでも表彰台圏内。チャンピオンを目指す』に変えてもいいのでは? と思える内容でした」
WEC第2戦は5月4~6日、ベルギーのスパ・フランコルシャンで行われる。
