ビスタAFコルセのドライバーであるトーマス・フロー、フランチェスコ・カステラッチ、ダビデ・リゴンの3名は、前年のフェラーリ488 GTEエボでのGTEアマクラス優勝に続き、WEC富士で大会2連覇を飾った。フローとカステラッチは2017年に富士スピードウェイでの初めての勝利を飾り、今回で3勝目を挙げたことにある。
彼らとチームを組むリゴンは、シリーズ通算7勝目をマーク。このフェラーリのファクトリードライバーは、これまでに出場したすべてのクラス(GTEプロ、GTEアマ、LMGT3)でWECレースの優勝トロフィーを手にしている。
日曜日の美酒はフェラーリ296 GT3のWEC初優勝となり、マラネロのスーパーカーブランドは2024年に新設されたLMGT3クラスで優勝した4番目のメーカーとなった。また、フェラーリは富士で最多勝を誇るアストンマーティンに並ぶ7勝目を挙げている。偶然にも54号車の優勝は、フェラーリにとってWECのGT部門での54回目の勝利と重なった。
一方、ビスタAFコルセの姉妹車である55号車のフェラーリは、レース開始直後にポールポジションから後退し、最終的に6位でフィニッシュした。これについてアレッシオ・ロベラはABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を失ったことが主な原因だと明かした。
ロベラはSportscar365に対し次のように語った。「レース中ずっとABSなしで走っていたが、簡単ではなかった。クルマのバランスがまるで変わってしまい、リヤタイヤのデグラデーション(劣化)がさらに進んでしまった。それでも優勝したシスターカーとの差はわずか20秒だったから、この問題がなければ優勝争いに加われたかもしれない」

■2年連続リタイアゼロから一転
LMGT3クラスで、ダブルスティントでの最速アベレージを記録したドライバーに贈られる『グッドイヤー・ウイングフット・アワード』は今回、TFスポーツのチャーリー・イーストウッドが受賞した。彼がトム・ファン・ロンパウ、ルイ・アンドラーデとともにドライブした81号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rはアルピーヌのハイパーカーに追突されて後退したものの、今季ベストとなる4位でフィニッシュした。
「レースを通して僕たちは本当に良いポジションにいた」と語ったイーストウッド。「残念ながら、ハイパーカーが最終コーナーでブレーキングをミスし、その煽りを食らってスピンしてしまった。彼(シャルル・ミレッシ/35号車アルピーヌA424)はドライブスルーを受けたけれど、それが私たちのレースを台無しにしたことには変わりない。最低でも表彰台、そしておそらく今日の勝利は、他の誰かのミスによって逃がされてしまった」
一方のミレッシは最終的には自身の非を認めたものの、イーストウッドの動きを問題視するコメントを残している。「僕としては何もできなかった。彼は左、右、左、右と動いていて、どこに向かっているのか分からなかったんだ」とミレッシ。「内側に入ろうとしたが、彼は最後の瞬間に動いた」
TFスポーツの姉妹車で、日本人ドライバーの小泉洋史が予選に続き決勝の序盤も好走を見せた82号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rは、1回目のピットストップ時にスターターモーターに問題が発生。レースの前半で10周遅れとなり最後にはパワーを失ってリタイアとなった。
プロトン・コンペティションの77号車フォード・マスタングGT3は、ピットロードでオフィシャルの指示を守らなかったとして、一分間のタイムペナルティを科された。関係するスチュワードのブルテンには、「77号車が作業エリアで停止したとき、チームはピットレーンのマーシャルから、クルマのバックウインドウがなくなっているためコースに戻る前に修理する必要がある、と指示された。チームはその指示に従わずにクルマをリリースした」とある。なお、このペナルティによる最終結果への影響はなく、77号車はLMGT3クラス15位で今大会を終えている。
ハイパーカークラスで見られた6台のリタイア(リタイア5台+未完走1台)は、ル・マン24時間レースを除けば今シーズン最多であり、レギュラーレースにおける同クラス最多を更新する数となった。なお、富士では2022年と2023年の両レースでハイパーカーのリタイアは0台だった。
2024年WECのシーズンフィナーレとなるバーレーン8時間レースは、10月31日(木)から11月2日(土)にかけて、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される。翌3日(日)は毎年恒例のWECルーキーテストが実施される予定だ。

