更新日: 2024.11.12 11:37
佐藤万璃音 2024年WEC第8戦バーレーン レースレポート
WEC第8戦、バーレーン8時間耐久レースで、今季初のポールポジション獲得! 無事WEC初年度を終えた佐藤万璃音
今季2024年よりELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに加え、新たにWEC世界耐久選手権シリーズへの挑戦を開始した佐藤万璃音(ユナイテッド・オートスポーツ所属、神奈川県出身・25歳)が、10月31日~11月2日に中東、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開催されたWEC第8大会『BAPCO ENERGIES 8 HOURS OF BAHRAIN』に参加しました。
95号車マクラーレン720S GT3エボを駆る佐藤万璃音は、前戦と同じくジョシュ・ケイギル選手、ニコラス・ピノ選手とともに自身にとって、WEC最終戦に臨みました。
初の母国凱旋レースとなった第7戦富士6時間耐久レースの直後、すぐさまELMS最終戦のポルトガルへと飛んだ佐藤万璃音は、レースを終えると慌ただしく帰国して次への準備を整え、約1週間の日本滞在を楽しんだ後、WEC最終戦の地、バーレーンへとふたたび飛び立ちました。
レースウイークに入り、チームとともに着々と準備を整えながら、佐藤万璃音はチームメイトであるジョシュ・ケイギル選手と共にシミュレーター作業をし、綿密なドライビングレクチャーを続けます。WECの場合、経験の少ないブロンズドライバーが予選アタックをするルールがあります。バーレーン国際サーキットに詳しいゴールドドライバーの佐藤万璃音が、初めてバーレーン国際サーキットを走ることになるブロンズドライバーのジョシュ・ケイギル選手にコースの攻略ポイントを教えることが、総合タイムで競われるWECでの戦法です。
フリー走行1回目、コースインした佐藤万璃音はマシンの感触を確認すると、すぐにアタックラップをこなして早々にピットに戻りました。バーレーン国際サーキットでの走行経験の少ないチームメイトたちに、より多くの走行時間を与えるためです。31周を消化してベストタイムは佐藤万璃音がマークした2分03秒537でした。
フリー走行2回目は39周を消化してベストタイムは2分04秒471、フリー走行3回目も特に大きなトラブルは出ず2分04秒394で7番手。予選に向けて着実にセットアップを煮詰め、データを解析します。3回のフリー走行でわかったことは、予選ペースは良いのですが、タイヤのデグラデーションが激しく、レースペースではダブルスティントの後半が厳しいのではという不安が残りました。それ以外は大きなトラブルもなく、自信を持って予選に臨みました。
予選アタックを担当したブロンズドライバーのジョシュ・ケイギル選手は、今回も佐藤万璃音からのドライビングアドバイスを忠実に再現し、5周目に2分02秒311のトップタイムをマークし、ハイパーポールへと進出。そしてハイパーポールでも5周目に2分02秒201のトップタイムをマークし、2位に0秒002の差をつけて見事今季初のポールポジションを獲得しました。
決勝レースでもうまいスタートを見せた95号車は、序盤はチームメイトの59号車とワン・ツー体制を築いていたのですが、やはり予想どおりタイヤの摩耗が激しく、1回目のスティントを終えた段階で次第にペースが遅れ始めました。1時間経過時点でクラス5番手、2時間を経過した時点でクラス6番手、そして3時間終了時には周回遅れの8番手となってしまいます。
95号車はその後もペースが上がらず、佐藤万璃音が交代した時には周回遅れの14番手でしたが、交代した次の周にセーフティカーが出されました。このタイミングまでピット作業を遅らせれば無理なく周回遅れからリカバーできたのですが、こればかりは運としか言いようがない展開でした。
しかし佐藤万璃音は、リスタート後にハイペースで前を行くマシンを次々とオーバーテイクし続け、自力でトップを抜いて実質的に同一周回とし、さらにトップのマシンをそこから8秒リードする快走を見せます。そのタイミングでふたたびセーフティカーが導入されたため、ピットで給油をしてコースイン。ライバルたちとのタイヤ交換のタイミングが違うとはいえ、ユーズドタイヤでありながら、さらに何台か抜き、タイヤ交換を済ませた後はさらに4台ものマシンをパスするという速さを見せて、8番手までポジションをアップする形でチェッカーとなりました。
■佐藤万璃音のコメント
「長いようで短い1年でした。今回のレースは最終戦ということもあって、気合いを入れて臨んだだけに、ポールポジションが獲得できたことは、自分にとってもチームにとっても本当に嬉しかったですね。もちろんジョシュ・ケイギル選手が一番嬉しかったと思いますが、一緒にシミュレータートレーニングをしたり、アドバイスをしたりしてきただけに、自分のことのように嬉しかったです」
「今日のレースは序盤の段階からタイヤのデグラデーション(劣化)が激しくてペースが上がらず、厳しい展開となってしまいましたが、自分のスティントでは、かなり思い切りの良い走りができましたし、何台もオーバーテイクできたので正直、楽しかったです。あのポジションから8位フィニッシュまで戻せたことは、チームにとっても強いパフォーマンスを発揮できた内容だったと思います」
「WECは今シーズン初参戦だったのですが、自分がまだカートを始めた頃に、すでにプロレーサーとして活躍していたレジェンドたちや、すでに何年もGT3マシンで戦っているファクトリードライバーたちを相手に、シーズンを通じて遜色ないパフォーマンスを見せられたことを誇りに思います。初めての母国レースも経験できましたし、日本の大勢のファンの方々から、熱意を持って応援していただいているのが本当に実感できました。ありがとうございました」
「今年はマクラーレンにとっても現行マシンでのGT3レースは初めてだったため、序盤の数戦は初期トラブルや信頼性の問題に悩まされて満足のいく結果は出せませんでしたが、シーズンが進むにつれて、信頼性も高まり、パフォーマンスも向上して、ミスやトラブルさえなければ表彰台やポールポジションが狙える状況まで持ってこられたことは、チームが今年成し得た成果だと思います。最終戦はポールこそ獲得できたものの悔しい結果でしたが、1年間応援してくださったすべての方々に、心より感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。皆さん、今シーズンも応援ありがとうございました」