Text : autosport web

 3月14日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦『第73回モービル1セブリング12時間レース』の予選がアメリカ、フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで行われ、BMW MチームRLLの24号車BMW MハイブリッドV8(ドリス・ファントール/フィリップ・エング/ケビン・マグヌッセン組)がポールポジションを獲得した。

 シーズン開幕戦のデイトナから2大会連続のポール獲得となったBMWほか、太田格之進(Eraモータースポーツ)が初参戦するLMP2クラスやGTDプロ、GTDの各クラスのスターティンググリッドが決定した金曜日のパドックから、各種トピックを紹介する。

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 第73回大会のポールシッターとなったファントール(BMW MチームRLL)は、金曜日の予選でグリーンフラッグの時間が短縮されたことにより、彼にとって3.7マイル(6.019km)の飛行場跡地のサーキットデビュー戦となった今大会で、2戦連続のポールポジション獲得に向けた戦略が変わったと語った。

 ファントールは「再開後は2周しか走れなかった」と語った。「アウトラップをどれだけ速く走れるかにもよるが、もともとは(アタックラップを)3周か4周走る予定だった。その後、手順を少し変えて、アウトラップを可能な限り速く走ってプッシュしなければならなかった。それが僕のやり方だった。うまくいったよ」

 GTPクラスの予選は、ジャック・エイトケンの31号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・ウェーレンがソフトウェア関連の問題でコース上でストップしたために赤旗が振られ中断されることとなったが、IMSAのスポークスマンによると、当該セッションにおけるグリーンフラッグの最少時間は達成され予選ポイントが与えられた。

記録達成を阻止/コルベットが火災から復活/ル・マンの頂点目指すフォードetc.【セブリング12時間予選日Topics】
2戦連続でポールポジションを獲得したドリス・ファントール(BMW MチームRLL/24号車BMW MハイブリッドV8) 2025年IMSA第2戦セブリング12時間

■不可解な3秒ロス

 ウェザーテック選手権のLMP2クラスで通算6回目のポールポジションを獲得したスティーブン・トーマス(TDSレーシング)は、予選セッションにブロンズドライバーの義務がなかったらレースに参加しなかっただろうと明かした。

 彼は次のように語った。「IMSAでは最低ドライブタイムの規定があり、これは寛大なことでとても楽しい。しかし結局のところ、イエロー(フルコースコーション)の時間が長かった一日の終わりには、全員が最後に追い上げることができ、そこではプロドライバーが勝利を目指してレースをしているように見える。ブロンズで予選に出場できることは、本当に大きな意味がある。なぜなら、最終的に勝利に貢献していると感じるためだ」

 ドリス・ファントールと予選2番手となったトム・ブロンクビスト(アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング)は、フェリペ・ナッセ駆る7号車ポルシェ963のタイムを上回り、チーム・ペンスキーの通算700回目のポールポジション獲得を阻止した。

 前日のプラクティス1~3回目で赤旗を出したため、計5台のマシンがそれぞれ予選最速タイムを失った。さらに、週末の早い段階でのデータ収集ができなかったため、予選で数台のクルマに5分間のストップ・アンド・ホールドペナルティが課された。

 ウェイン・テイラー・レーシングの45号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2は、オープニング・プラクティスでのダニー・フォーマルのクラッシュから復活した1台だ。「昨日の影響がいくつかあると思う。それを解決する必要がある」とコドライバーのトレント・ハインドマンは予選後に語った。「最初のタイムラップは、タイヤの温度と空気圧が上がっていたため、本来あるべき状態と比べて適切だったと感じた。そこからはもっとタイムを稼げると思っていたのだけど、1周に3秒ずつロスする事態になってしまったため、それを見直す必要がある」

記録達成を阻止/コルベットが火災から復活/ル・マンの頂点目指すフォードetc.【セブリング12時間予選日Topics】
60号車アキュラARX-06(アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング) 2025年IMSA第2戦セブリング12時間

■ウィケンスがテスト参加へ

 DXDTレーシングのプログラムマネージャーを務めるブライアン・セラーズは、36号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rが1月のデイトナ24時間レースで火災を起こした後、大規模なリビルドを受けたことを明らかにした。

 セラーズはSportscar365に次のように語った。「プラット・ミラーやゼネラルモーターズ(GM)のような良いパートナーに恵まれて本当に良かったと思える瞬間だった。なぜならクルマはデイトナから直接プラット・ミラー・モータースポーツに渡ったためだ。私たちはクルーをそこに派遣し2週間かけてクルマを分解して組み立て直した。彼らはシャシーを検査し、ストレステストを行い、すべての接合部が良好であることを確認した。そして、私たちはそれを組み立て、テストのためすぐにここに戻ってきた」

 さらにセラーズは、DXDTがレース後の火曜日と水曜日にセブリングでロバート・ウィケンスとテストを行う予定であることを示唆した。そのテストでは、カナダ人ドライバーが今年後半にウェザーテック選手権でレースする際に使用するボッシュ製ハンドコントロールシステムが使われる予定だ。テストはチームのIMSAシャシーで実施されるという。

 BMWの広報担当者はSportscar365に対し、今週末のレースでBMWハイブリッドV8のペアに施されたBMWノースアメリカ50周年記念のカラーリングは、ウェザーテック選手権シーズンの残りの間24号車と25号車にそのまま残ることを認めた。

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36号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(DXDTレーシング) 2025年IMSA第2戦セブリング12時間

■タイヤ開発で「大きな一歩」

 ポルシェ・ペンスキーのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、ミシュランが2026年に向けた新しいハイパーカー/GTPタイヤの開発で「大きな一歩」を踏み出したと考えている。このタイヤの開発テストは、今月初めにルサイル・インターナショナル・サーキットで行われたWEC世界耐久選手権第1戦『カタール1812km』に続き、WECハイパーカーメーカーの大半が参加した。

 ディウグイドは次のように語った。「率直に言って、ミシュランは2024年後半にかなり大きな進歩を遂げ、2026年に向けたロードマップの多くの項目と目標をチェックするテストに、それらを達成するタイヤを持ち込んだと思う。良い点は、彼らが多くのデータを収集し、非常に競争力のあるタイヤを(カタールに)持ち込んだことだ。今後どうなるかはわからないが、我々の知る限りミシュランはタイヤ開発において正しい方向に向かっている」

 Sportscar365は、新しいタイヤが来年1月のデイトナ24時間でデビューする前に、今年5月にポール・リカール、6月にワトキンス・グレンでさらにタイヤテストが予定されていることを理解している。後者にはIMSA GTPチームとメーカーが参加すると考えられている。

 コルベット・レーシングのスター、アントニオ・ガルシアは通算19回目のセブリング12時間レース出場を控えており、2020年7月にCOVID-19パンデミックの最中に開催されたスプリントレースを含めると、フロリダの飛行場跡地でのレースは20回目となる。

​​ 国立コルベット博物館は、2024年にコルベット殿堂入りを果たしたコルベット・レーシングのフォトグラファー、リチャード・プリンスの芸術性を称える特別展をオープンした。『スピード・キャプチャー:リチャード・プリンス写真展』は年末まで開催される。

記録達成を阻止/コルベットが火災から復活/ル・マンの頂点目指すフォードetc.【セブリング12時間予選日Topics】
現在WECハイパーカーとIMSA GTPの両カテゴリーでは同じミシュラン製タイヤを使用している

■現時点ではWECのみ

 ハート・オブ・レーシング(HoR)のチーム代表イアン・ジェームスによると、WECのスケジュールと重なるウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカとカナディアンタイヤ・モータースポーツ・パークのふたつラウンドで、27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3エボをドライブするトム・ギャンブルの代役は「まだ決定していない」という。

 アルピーヌのモータースポーツ担当副社長ブルーノ・ファミンは、同ブランドが2027年にアメリカのロードカー市場に参入する予定であるにもかかわらず、ウェザーテック選手権への参戦については「進展がない」と語る。「注視しているが、まだボタンを押す時期ではない」と同氏は語った。

 フォードは、2027年にデビュー予定のWECハイパーカー・ファクトリープロジェクトをすでに確定させているが、IMSA GTPプログラムの可能性についてはまだコメントしていない。「私たちが発表したのはWECプログラムだけなので、私が言えるのはそれだけだ」と、フォードパフォーマンスのグローバルスポーツカーマネージャー、ケビン・グルートはSportscar365に語った。

“ブルーオーバル”のWECプログラムは、2029年に現在のハイパーカールールが終了するまでの3年間のコミットメントであると示唆したグルートは、フォードが総合優勝を狙ってルマン24時間レースに復帰することの重要性を強調した。「私の考えでは、それは初日から重要だった」と彼は語った。「(フォードGTによる)GTプログラムはクールだったが、それは総合優勝ではなかった。その目標は私たちにとって大きなことだ」

記録達成を阻止/コルベットが火災から復活/ル・マンの頂点目指すフォードetc.【セブリング12時間予選日Topics】
LMDhカー『アルピーヌA424』でWEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦しているアルピーヌ・エンデュランス・チーム

この記事は国内独占契約により Sportscar365 提供の情報をもとに作成しています

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