「TMGに帰ったら、会社中が笑顔であふれていました。みんな、心の底からうれしそうな顔をしていた。社長報告などのために帰国したら帰国したで、日本でもみんな同じ反応でした。自分自身がどうこうというより、みんなの喜んでいる顔を見ることができて幸せでした」
勝っても負けてもこなさなければいけない業務と、ル・マン24時間に勝ったからこそ身に降りかかる案件でドタバタした日々を過ごし、2週間ほど経ってようやく落ち着いた。そろそろ勝利の実感が湧き上がってもよさそうなものだが、実際には「そこで完全に灰になった」。
「(ドイツの家の)ベランダに出てハンモックに乗り、空を見ていました。何もやる気が起きないし、身体は疲れている。昨年までは疲れていながらも、次に打たなければいけない手をずっと考えていました。今年は思いが叶った達成感で、空っぽでした」
高い空の向こうに、村田は何を見ていたのだろうか――。
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組織を率いるリーダーとしてさまざまな困難に立ち向かい、それを克服して成果を出した村田氏のルーツは、“坂本龍馬”であり、“反射望遠鏡”であり、“登山”でもあった――。
10月11日発売のautosport特別編集『TOYOTA×Le Mans 24h トヨタ ル・マン挑戦の軌跡』では、そんな村田氏の劇烈なる半生も明らかにしています。
ル・マンの頂点に立ったからこそ見える景色がある。その景色を少しだけ共有するための一冊です。
