金曜夜から土曜朝にかけてサルト・サーキットには雨が降り、朝10時30分から15分間のウオームアップ走行はウェット路面で始まった。このセッションはレーススタートを担当する山下がひとりで担当し、ウエットタイヤを履いてクルマの最終確認を行なった。
路面はセッションの最後には乾き始めており「最後はドライタイヤでもいけたと思います。クルマ自体はウエットタイヤでも悪くないと思います」 と山下。
午後2時30分、ついに決勝レースがスタートする。

スタートドライバーを務めた山下は3スティントをタイヤ無交換で走る戦略。スタートでふたつポジションを落としたものの序盤はタイヤを温存しながら走行。7周目にはGT勢のトラフィックをうまく使ってオーバーテイクし4番手にポジションアップする。
そして8周目に1回目のピットイン。ここでピット作業を給油だけに短縮したことで2番手に浮上。続く第2スティントでは今度はGT勢を使ってポジションを守るなど、攻守に長けた走りを披露していく。
続く第3スティントでも山下は三つ巴のトップ争いを演じることに。27周目のインディアナポリスからアルナージュコーナーで2番手のクルマに仕掛けるシーンもあった。 山下の奮闘ぶりは海外のメディアからも注目され、国際映像でも山下の走行シーンが何度も中継された。
28周目にピットインし、バターソンに交代する。
「スタートではエンジンの水温が上がりすぎてエンジンがセーフモードに入ってしまい、リミッターがかなり低い回転数で効いたせいで2台に抜かれてしまいました。あれがなければもうちょっと早くにトップを捉えられていたかもしれません。とにかく24時間レースなので無理をしないことを心がけて走りました」
この日はパターソンも好調でブロンズドライバー勢では上位のタイムで周回を続ける。しかしパターソンの走行中からシフトチェンジに問題が発生し、フィヨルドバッハが運転を引き継いだ直後にその症状が深刻化。6速から変速できなくなってしまう。
なんとかコースを1周して戻ってきたクルマを、午後7時17分、チームはガレージに入れて修復作業を始めた。ギヤボックス、油圧システム、電子制御システムなどすべてを新品に交換しただけでなく、ガレージには車体、ギヤボックス、電子制御を製造する各メーカーのエンジニアも集まりトラブル解決にあった。
山下、パターソン、フィヨルドバッハの3名は、チームからのリクエストで何度か症状を確認するためコースに出るが、問題は解決できていなかった。そして午前2時4分、このままでは各ドライバーの最低搭乗時間を満たすことができないと判断し、チームはリタイアを決断した。
午前3時過ぎにホテルに帰った山下は、翌朝サーキットに戻りチームメイトたちとチェッカーを見届けた。
「チームはなんとかトラブルを修復しようとしてくれていたので、リタイアは残念でした。レース結果をみると、もしあのまま走ることができていたらトップ5に入れていたのではと思います。こちらのクルマにそれだけのペースはあったと感じています」
「個人的には走行時間が短くなってしまったとはいえ、初めてのル・マンでトップ争いができたことはとてもよかったと思います。チャンスをくれた皆様に本当に感謝しています」
「もし次回があるのなら、最後までしっかりと戦いたいです。引き続き応援よろしくお願いいたします」

WEC第7戦 ル・マン24時間レース 山下健太 個人成績(LMP2クラス)
・予選
Best Time:木曜日予選 3’27.611(チーム内1位、LMP2クラス予選出走27人中6位)
ハイパーポール:3’25.426(LMP2クラス予選出走6人中 4位)
・決勝
Fastest Time:3’31.018(チーム内1位、LMP2クラス決勝出走72人中27位)
走行周回数:35周(全88周中)