また、ボッシュがインバーターとともに供給するモーターの出力についてもLMH(のハイブリッド車)とはスペック上に差異があり、LMHが回生/力行ともに最大200kWであるのに対し、LMDhは回生のみ200kWで出力側は50kW(約68PS)となっている。さらにMGU-Kの搭載位置もフロントとリヤで異なるのも特徴で、LMDhは後者を採用した。
ハイブリッドシステムの構成要素であるバッテリーとDC-DCコンバーターは、ウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング製。システムの最大出力はLMHと同じ500kW(約680PS)で、この内の約470kW(630hp/約638PS)を各メーカーの内燃エンジンが担う。パワートレインが発揮する動力をミシュランが供給するリヤタイヤに伝達するのは、Xトラック社製の横置き7速ギアボックスだ。
LMDhの特徴のひとつであり、自動車メーカーの関心を惹き付ける魅力のひとつにコスト制限を設けている点がある。この中では、ハイブリッドシステムのコストが30万ユーロ(約3900万円)以下と規定され、メーカー独自のボディワークと共通ギアボックスを除くLMP2シャシーに関するコストは34万5000ユーロ(約4500万円)以下と定められた。
車両全体での価格は100万ユーロ(約1億3000万円)が想定されているが、この中にはエンジン部分のコストは含まれていない。とはいえ、すべてをオリジナルで製作するLMHと比較して、共通パーツを数多く使用することになるLMDhの車両製造コストが低く抑えられるのは明らか。開発コストを抑えながらモータースポーツの場で自社ブランドのアピールを行いたい自動車メーカーにとっては非常に魅力的なカテゴリーと言える。
それを証明するかのように、2023年にスタートする新規定への参加を表明したメーカーは2021年7月現在で4社に上る。もっとも早く手を上げたのは2016年を最後にWECから退いたアウディだ。
彼らに続いたのは、同じフォルクスワーゲン・グループに属する“耐久王”ポルシェ。この2社は、ともにマルチマチック社のシャシーを使用することを発表し、カスタマー展開を行うことも示唆。さらに、ポルシェはチーム・ペンスキーと組んでWECとIMSAにワークス体制で参戦し、各シリーズに2台のLMDhマシンを送り込むことをアナウンスするとともに、新車のロールアウトを今季中に行いたいとしている。

