更新日: 2021.11.15 02:41
4周遅れから“起死回生”IMSA撤退のマツダが有終の美。白熱のチャンピオン争いは最終ラップでの決着に
これらの事故処理のため、レース開始から8時間までの間に計10回のコーションが導入されたことから、各クラスで目まぐるしく順位が変動するとともに、周回遅れとなった車両がリードラップにカムバックする場面が散見された。その代表例が一時トップから4ラップ遅れたマツダだ。彼らはコーションが出る度にラップバックを繰り返し、ついに6時間を前にして同一周回に復帰すると、以降は表彰台争いに絡んでいく。
日が沈み、気温・路面温度ともに10度を下回ったレース終盤戦。総合優勝を争うDPiクラスでは残り1時間30分あまりで、7時間目以降の同クラスで大半のラップを支配していた60号車アキュラを31号車キャデラックが攻略し首位に返り咲く。リードを許したファン・パブロ・モントーヤの背後にはジャービス駆る55号車が迫る一方、可夢偉の48号車キャデラックと5番手を争っていた同陣営の5号車はイレギュラーのピットインを行い、そのままリタイアとなった。
ドラマはさらに続き、マツダに交わされ3番手に順位を落としていた60号車アキュラがフィニッシュまで残り55分をタイミングでピットインすると、ピットレーンでの作業後にガレージエリアに向かってしまう。これにより10号車アキュラが3番手に浮上。この直後から55号車が31号車に接近し、フェリペ・ナッセとティンクネルによるトップ争いが繰り広げられる。
ギャップが1秒を切る接戦が繰り広げられるなか、レース残り時間37分で優勝を争う2台が同時ピットイン。31号車がリヤ2本でピットアウトした一方、55号車は4本交換のため若干遅れてコースへ。翌周には3番手10号車もピットインしタイヤ4本交換で出ていく。可夢偉が乗り込んだ48号車は残り時間32分でスプラッシュ・アンド・ゴーを敢行しトップと13秒差、3番手10号車から3秒後方の位置につけた。
ラストピット後、約3秒差で走行を続ける上位2台のギャップが詰まったのは、周回遅れが絡んだ残り23分のタイミングだった。GTカーに引っかかったナッセの背後に55号車が迫ると、ティンクネルがターン7で31号車のイン側に飛び込みトップを奪う。抜かれたキャデラックもストレートを挟んでシケインで再逆転を狙うが、ティンクネルが譲らず。その後はマツダが徐々にリードを広げていく展開に。
一方、チャンピオンシップにおいては31号車と10号車、この2台のうち先にゴールした方が年間王者というシチュエーションであることから、2番手争いが熱を帯びてくる。残り10分の段階でタイム差は約3秒。5分後には約2秒差となるが、同時に55号車とのギャップも縮まりトップ3台が2.5秒以内の団子状態でファイナルラップへ。
タイトルを意識して無理ができない31号車を尻目に、55号車マツダはキャデラックを3.2秒先行してトップチェッカーを受け、シリーズとの別れの舞台を自ら最高のかたちで演出した。対してチャンピオンシップを争う31号車と10号車は、ファイナルラップのターン10a進入時に接触。WTRのアキュラが止まりきれずグラベルを直進し、キャデラックの前に出るかたちでコースに戻ったが、最後は31号車がこれを抜き返し2位を死守した。この結果ナッセ/ピポ・デラーニ組が2021年シーズンのDPiタイトルを獲得している。