このあと、佐藤プレジデントと一貴副会長、そしてふたりのドライバーは、同じ建屋内にあるエンジンベンチ室の見学へ。我々メディアも担当者の説明を受け、その内部を案内してもらうことができた。
ベンチ室はリヤ側ユニット(エンジンとギヤボックス)とフロント側ユニット(MGU)が、隣り合う別々の部屋に置かれていた。部屋は分かれているが、それぞれのコンポーネントはもちろん接続状態にある。
この開発ベンチではエンジンのマッピングやギヤシフト、フロント&リヤの協調など、すべてが走行を模した状態で再現でき、各種制御セットアップを行って動作確認・検証することが可能となっている。また、各サーキットの吸気温度や湿度も再現可能だという。


「では、ポルティマオを走ってみましょうか」
コントロールルームでスタッフがスイッチを入れると、エンジンが回り出し、プログラムに沿ってシフトアップ、シフトダウンがされ、コースを仮想した“走行”が始まる。
レースでピット内に置かれるものとほぼ同様だというテレメトリー画面も、エンジンに合わせて各種数値やグラフが連動。この画面上で最も興味深かったのが、フロントアクスルとリヤアクスル、ふたつの車軸からの出力(kW)が表示される棒状のグラフだった。
今季開幕戦でのBoP(性能調整)に合わせ、車速が190km/hに達するまではリヤアクスル(=エンジン)のみが最高506kWを出力しているが、190km/hを超えた瞬間にフロントアクスル(=MGU)が出力を発生し、その分リヤの出力が減らされ、合計506kWとなるよう調整されている様が見て取れる。
精緻なエネルギーマネジメントを行なっている様、そしてBoPにより“四輪駆動”となる時間が少ないかことが、よく理解できた。技術的詳細に関わる部分をデフォルメしつつ、オンボード映像とともに公開してもらえればファンにとっても楽しいものになるのでは、と感じた。
その隣には実際のGR010ハイブリッドのステアリング上と同様のダッシュ・モニターも置かれ、現在のギヤや車速、そしてバッテリー容量(SOC)などが表示される。
今年レギュラードライバーとなった平川もこの場を訪れるのは初めてとのことで、普段自らの背後に置かれるパワーユニットがどう開発されているのか、興味深く見学していたのが印象的だった。
隣接するベンチ内ではまもなく、新たなGT3車両向けの、まったく新しいエンジンが回り始めるという。2022年の東京オートサロンで初めてその存在が明かされた『GR GT3コンセプト』のプロジェクトも、このC-10で開発がスタートするというわけだ。
