そんな新生トヨタチームのライバルの印象では、アルピーヌ、さらに、2年目のグリッケンハウスの名前を挙げる。
「トヨタのライバルたちの動きとしては、『予選は見せなきゃ』ということでアピール狙いでガンガンくるでしょう。なかでもアルピーヌ(・エルフ・チーム/36号車アルピーヌA480・ギブソン)は予選では確実に来ますよね。そして2年目のグリッケンハウス・レーシング(708号車&709号車グリッケンハウス007 LMH)がどういった戦い方をしてくるかという意味では、こちらも要注意だと思います」
「(LMP1マシンを使用する)アルピーヌは当然速さを見せてくるだろうし、それがどれだけの時間続いていくかという部分では正直、まだトヨタに分があるだろうと思いますが、(LMH規定において)完全に同じ土俵に立っているところでは、グリッケンハウスはある程度警戒しないといけない。注意するに越したことはないと思います」
ル・マン/WECではトップカテゴリーのハイパーカークラスだけでなく、LMP2とLMGTEプロ、およびLMGTEアマクラスの熱戦も見逃せない。またGTEアマクラスでの日本勢の活躍にも注目だ。
「LMP2は今年、力関係がいろいろと変わってきました」と高橋二朗さん。
「ユナイテッド(・オートスポーツUSA)が少しぱっとしないのかな。とはいえ、あのクラスは初めから終わりまで争っていて、ここ数年のル・マンでは24時間レースなのに『まだやってるの?』という状況じゃないですか。だからLMP2クラスは今年も目を離せないと思いますよ。(星野敏と藤井誠暢が777号車アストンマーティン・バンテージAMRをドライブする)D’station Racingは、無難に行けば上位のいいところまで行くでしょう」
「木村(武史)さんのCARGUY Racing(ケッセル・レーシング/57号車フェラーリ488 GTEエボ)も大きなトラブルがなければ見事に完走して、(スーパーGT GT300クラスでチームを組む)ケイ・コッツォリーノがまたレース後に泣くんじゃないのかな(笑)」
最後に改めて“ル・マンの魅力”について問われた高橋二朗さんは、自身の取材経験を基に「辛いけれど、24時間を終えるとうれしいし感動する」と、振り返り、「ファンのみなさんも、できれば一度、現地に足を運んでほしい」と付け加えた。
「昔からそうで、2019年までずっと現地に行っておいてなんですが、いつも『なんでル・マンまで来ちゃったかな……』と思うんですよ。でも、走る方も取材する方も辛いのにレースが終わるとうれしいんですよね。あそこはやっぱりモータースポーツの“パワースポット”みたいなところで、行ったのと行かないのでは雲泥の差のだと思うんです。実際に行った人たちは感動しますよ」
「(ル・マン24時間を主催し、FIA国際自動車連盟とともにWECを運営する)ACOフランス西部自動車クラブの『24時間を絶対に走るんだ』という、約100年前から続く確固たるコンセプトが素晴らしいんです。だから、できれば1度現地に行ってみてください」

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3年ぶりに実施された公開車検に続き、レースと同様に公道を封鎖して行われるテストデーを終え、いよいよイベント本番に向けてボルテージが上がっていくル・マン24時間。第90回大会として開催される2022年のレースは、11日土曜16時(日本時間23時)にスタートが切られ翌12日日曜の16時まで続くが、今年、現地に行けなくても、日本からも中継で応援することはできる。今年もJ SPORTS 1ならびにJ SPORTSオンデマンドでは、ル・マン24時間決勝レースの模様をスタートからフィニッシュまで完全生中継。詳しくはJ SPORTS公式サイト(https://www.jsports.co.jp/motor/wec/)まで。