今回の決勝では、スタートした62台のうち53台がフィニッシュ時に順位認定されており、これはル・マン史上最多の完走台数となった。
優勝した8号車GR010ハイブリッドは、昨年優勝した7号車の371周を上回る、380周というハイパーカー・クラスにおける走行距離記録を打ち立てた。現在のところ、ル・マンでの最長不倒距離は2010年にアウディがマークした397周だ。
また、ハイパーカークラスにタイヤを供給するミシュランは、1998年以来、ル・マンでの無敗記録を『25』へと伸ばしている。
例年とは異なり、2022年のレースでは、フィニッシュライン上のバルコニー部分から、チェッカーフラッグが振られた。
これは2021年のレースフィニッシュの際、コース上でフラッグを振っていたオフィシャルが最後まで続いていたLMP2クラスの順位争いをしている車両を飛び退けるという危険な状況に陥ったことから、場所が移されたものである。

■グリッケンハウスとアルピーヌの“ほころび”
グリッケンハウス・レーシングへのオペレーション・サポートを行い、クルーも送り込んでいるヨースト・レーシングは、2016年以来の総合表彰台に返り咲いた。彼らは2016年、アウディLMP1ファクトリーチームの実働部隊として、ポディウムフィニッシュを達成していた。
アルピーヌ・エルフ・チームの36号車アルピーヌA480・ギブソンは、イグニッションコイルの問題により一時的に8つのシリンダーのうちふたつを失い、5時間目にはガレージで修復を強いられた。
チーム代表のフィリップ・シノーによれば、新しいコイルの装着により数ラップを失ったという。
アルピーヌのニコラ・ラピエール/アンドレ・ネグラオ/マシュー・バキシビエールは、これらトラブルに見舞われながらも、WECのドライバー選手権ランキングにおけるリードを保っている。ル・マンを制したトヨタ8号車の3人が3ポイント差でランキング2位につけている状況だ。
708号車グリッケンハウス007 LMHは、スローゾーンでの速度調整が難しいという問題に悩まされていた。ピポ・デラーニは「スピードが上がらないという不具合があった。それにより、僕らは多くの時間をロスしてしまった」と語っている。
3位表彰台に立った709号車は、ル・マンのみのスポット参戦のため、ハイパーカー世界耐久選手権のポイントを獲得することができなかった。このため、5位でフィニッシュしたアルピーヌのクルーは4位に与えられる24ポイントを手にし、選手権のリードを維持することができている。

■ペドロ・ラミー以来のポルトガル人優勝
JOTAの38号車でLMP2クラスを制したウィル・スティーブンスは、GTEとプロトタイプの両カテゴリーでル・マンを制した5人目のドライバーとなった。彼は2017年、JMWモータースポーツでLMGTEアマクラスを制している。
これまでには、ロマン・デュマ(LMGTEプロ、LMP1)、マルク・リーブ(LMGTEプロ、LMP1)、クリスチャン・ポウルセン(LMP2、LMGTEアマ)、ハリー・ティンクネル(LMP2、LMGTEアマ)が、この記録を達成していた。
JOTA38号車のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタと、LMGTEアマクラスを制したTFスポーツのエンリック・チャベスは、2012年にアストンマーティン・レーシングのペドロ・ラミーがLMGTEアマを制して以来となる、ル・マンでクラス優勝を達成したポルトガル人ドライバーとなった。

ポルシェはLMGTEプロクラス最後のル・マンを制した。リヒャルト・リエツはプロクラスの最後の優勝者のひとりとなったことについて、喜びと同時にクラスの消滅を嘆く、複雑な心境を吐露している。
「悲しいよ。とてもいいクラスだった。でも、それが人生というものだ。人生において不変なのは、“変化すること”だけだからね。いまは、終わりを迎えたんだ」
