【ル・マン24Hブログ(4)】ガチすぎる“公式”タイヤ交換選手権。予選では『ベンちゃん効果』を目撃/“ヘンタイ”カメラマン現地情報
レース界のマニアック“ヘンタイ”カメラマンこと鈴木紳平氏が、今年も愛してやまないル・マン24時間レースへと取材に赴きました。コロナ禍の各種制限がほぼ解除されたフランス・ル・マンはどんな様子なのか? ヘン愛に満ちた鈴木氏の視点で、ル・マン現地の“細部”をお伝えしていきます。
『ル・マン・ミュージアム』を紹介してきた第2回、そして第3回に続く今回は、いよいよレースウイークの裏側をお届けします。こちらの記事でチラっとお伝えした編集担当も気になっていた、アノas誌名物企画(?)の様子をレポートしてもらいましょう。
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皆様、ル・マンブログ楽しんで頂けていますでしょうか? 続けてきたル・マンブログも今回が最終回。ここでは、火曜日のピットウォークから決勝まで、レースウイークの振り返りをしたいと思います。あの懐かしい顔や名車、タイヤ交換選手権の模様もお伝えします。
それでは2022年ル・マンブログ最終回“栄冠は君たちに輝く”編、いってみましょう!
レースウィーク火曜日、サーキットがお客さんへ解放されます。入場数制限もなくなりピットウォークは大盛況です。
これまではドライバーサイン会、ACOによる全車撮影のみでしたが、今年はほぼ全チームが参加してのタイヤ交換選手権(正式名称ピットストップチャレンジ)がACO主催のもと開催されました。10年以上前からオートスポーツ誌で行ってきたこの企画、ようやく時代が我々に追い付いてきたのかもしれません(そのうちビヨンド選手権もね)。各チーム、朝から練習に余念がありません。
LMGTEプロクラスのポルシェGTチームも飴玉を舐めながら打ち合わせです。
ちなみにトヨタGR010ハイブリッドの転がしホイールの色は白。これはこれで爽やかでカッコイイと思います。ただ7号車クルーのタイムはふるわず下位に沈みます。
そんなところへハイパーカークラスのライバルであるグリッケンハウス・レーシングの総帥、ジム・グリッケンハウスさんがやってきました。お話させて頂いたことはありませんが不思議な感じの方です。一回ちゃんとロングインタビューをしてみたいですね。富士に来るのをお待ちしております。来るのかグリッケンハウス?
最初のブログでもお伝えしましたがその7号車には現地採用で今年から木村祥吾メカニックが加入しています。その橋渡し役となったのが今年からプロジェクトリーダーに就任した佐藤真之介さん。両社ともメカニック学校の先生が同じだった事もあり、国内レースの頃から先輩後輩の仲だそう。だからといって技術を信頼しなければ推薦はできないわけで、今後の木村メカの活躍、期待しています。「おい木村!」「はい!(ダッシュ)」という光景が微笑ましかったです。
さぁ8号車の番です。事前練習ではナットが噛むなどのトラブルが発生しています。
繰り返しますがこれは第90回ル・マン24時間レースの公式行事。タイム計測を複数人で行い、ピットマーシャルがオーガナイズ、実況はもちろんル・マン公式アナウンサーであるブルーノ・ヴァンデスティックさんが担当するというガチな体制です。
トヨタ8号車はブレンドン・ハートレーさんがハンドルを保持しブレーキを踏む役割を買って出ます。こちらもガチです。
さぁスタート! 8号車いい感じです。メカニックの表情もガチです! タイムは10秒1! クラス別競技ではありますが全体ベストのタイムをマークしました!
右フロントガンマンを担当した最古参メカニックのロイックさん嬉しそうです!
ハートレーさんにも『Good Job!』の声が飛びます。しっかりハンドルを握ってブレーキを踏んでいたよ! と興奮気味。ハートレーさんいい人です。
さぁ表彰式です。ガチの表彰台でちゃんとトロフィーが用意され表彰式が執り行われます。8号車のクルー嬉しそうです。
ちなみにLMP2は13号車のTDS レーシング(11秒6)、LMGTEプロは92号車ポルシェGTチーム(10秒3)、LMGTEアマは33号車アストンマーティン・バンテージAMRのTFスポーツ(10秒1)となっています。表彰式のプレゼンターはウルリッヒさんが。傍らにはACO会長フィヨンさんの姿もありました。ここもガチです。
もちろんジャンパンファイトもやります。歓び爆発なのかストレスが溜まっているのか、シャンパンファイトが派手です。
8号車のロイックさん愛機と共に記念写真、嬉しそうです。きっとこのトロフィーは一生大事にされる事でしょう。
ちなみに実況を担当したブルーノ・ヴァンデスティックさんですがカウントダウンからスタートの合図もします。肩が入っていて気合が入っています。
LMP2 44号車ARCブラティスラバがナット噛みなどしてグダグダになった際には、メカニックのケアも忘れません。やはりル・マンにこの人あり、です。
タイヤ交換選手権の後はドライバーサイン会です。ハートレーさん子どもとの写真撮影にも喜んで対応。いい人です。
さぁこれから走行開始。まもなくハイパーポールが始まります。夕焼けバックにピット出口に各車が並びます。と思ったら一番手前のピット31号車チームWRTに見慣れた顔があります。“ベンちゃん”ことブノワ・トレルイエさんです。走行開始まで5分くらいしかなかったので一言二言言葉をかわしただけですが変わらず元気そうです。この後このチームがLMP2のポールを獲得します。やはり“ベンちゃん”には“速い”が似合うということでしょうか。
熾烈なアタック合戦の結果、各クラスのポールが決まりました! 各車ゴールライン付近で停車し4台揃ってグランドスタンド前のセレモニーへ向かってきます。夕暮れ空をバックに一番速い奴らが隊列を組みます。もう、クッソカッコイイです。
熾烈なハイパーカークラスの予選で逆転ポールのハートレーさん。これがまたカッコイイ。使い古された言葉ですが“青い瞳のサムライ”見参であります!
さぁ決勝日、グリッドはお客さん満タンです。ちなみに誰もマスクはしていません。
今年もル・マンは水素推し、ということでグリッドには水素で動くセンサーカーが登場。人間が近寄れない現場での活躍するロボットのようですが、ここでも水素を源とする取り組みが行われているようです。
もちろんACOのフィヨン会長の愛車も水素カー『トヨタ MIRAI』であります。
グリッドには爆弾探知犬も居ます。左の放置されていたリュックを怪しんだ警備員からの要請で派遣されてきたようです。
話は戻りますが、グリッド整列の前にはサプライズとして今大会のグランドマーシャルであるジェラ―ル・ラルースさんと1973年の優勝時の僚友アンリ・ペスカローロさんによる1972・1973年の総合優勝車エキップ・マトラシムカ・シェルMS670及びMS670Bのランデブー走行が。
ラルースさんグランドスタンド前で停車し、ウルリッヒさんとがっちり握手です。
続いてスタンドからは「アンリ!」の大合唱が。ペスカローロさんの人気、健在です。
ふたりで記念写真に納まります。往年のファン、特にフランス人にとってはたまらない光景でしょう。
横で見守るACO会長フィヨンさんのドヤ顔が堪りません。やはりここはフランス。フランス勢が目立ってナンボの場所と痛感します。来年が楽しみでもあり、少し怖くもあります。
セレモニー終盤、ラルースさんが愛機を見つめます。御年82歳ですが愛機に対する視線は鋭いものがあります。きっとこの後メカニックへ不良個所を伝えていたことでしょう。
レースのことは割愛しますが8号車が無事トップチェッカーです。フィニッシュドライバーを務めたハートレーさん、ガッツポーズをしています。カッコイイです! ファンになりました!
僚友7号車はトラブルもあり2位に。パルクフェルメに小林可夢偉さんは現れず、その悔しさを窺い知ることができます。また来年に期待したいと思います。
表彰式後、トヨタ8号車が観客の拍手のなか車検へと向かいます。いいシーンです。
第90回ル・マン24時間、終わりました。まさに手に汗握る2台の闘いの末、トヨタ7号車には電気系トラブルが発生し脱落、来年へと課題を残すレースとなりました。時を同じくして我が家でも電気の供給がストップ。原因は料金の未払いと判明し家人が対応してくれトラブルは解決しましたが、冷蔵庫の中身が壊滅。こちらも壮絶な戦いだったようです。
いよいよ来年は100周年大会。トヨタはポルシェ、プジョー、フェラーリ等と戦うことになります。その時までに先ずは電気料金支払いを口座振替にしよう、そう思った第90回ル・マン24時間でした。次回ブログは鈴鹿8耐となります。それまで皆さんごきげんよう。