LMDh&GT3化で予想される”グリッド争奪戦”「ACOの采配が気になる」【BMWモータースポーツ代表に聞く/後編】
──LMGTEクラスやLMP2クラスにも数多くのジェントルマンドライバーが活躍しています。しかし、たとえば今季のル・マンでは、プラクティスや予選でクラッシュを連発し、その運転スキルと危険性からレースへの出場禁止命令が出されたジェントルマンドライバーがいました。LMDh でもそのようなことが起きる可能性があるかと思います。LMDhのジェントルマンの参戦の可能性についてはいかがお考えですか?
AR:ざっくりと言えば、メーカーがマシンを作り、レースではBoP(性能調整)でポテンシャルを均一化して競う。カテゴリは違うが、LMDhのコンセプトは基本的にGT3と似ている。
LMDhも、必ずしもトッププロドライバーだけが参戦するカテゴリーではないと考えている。ワークスチームには難しいが、プライベーターが今後LMDhで参戦した場合、ジェントルマンがドライブする可能性も充分考えられるので、開発の際は必ずしもトッププロだけがドライブするわけではないということを考慮すべきなのかもしれない。
ジェントルマンドライバーの中には、ル・マンへトップカテゴリーのマシンで出てみたいと夢を持っている人もいるだろう。彼らが夢を叶えるために、経済力と基準を満たし、スキルを持ち合わせるのならば、参戦に否定はしないし、むしろ歓迎するチームも今後出てくるのではないだろうか。
──BMWモータースポーツのLMDhの開発プログラムではRMGが開発テストチームでマルコ・ヴィットマンとアウグスト・ファーフスの2名が開発ドライバーを担っていると認識していますが……。
AR:BMWでは特に誰を開発ドライバーという位置づけはしていない。名前は伏せるが開発プログラムでは多くいるワークスドライバーが複数人参加している。契約ドライバーも含めると19名ものワークスドライバーがいるので、ある特定のドライバーだけが開発テストを担うということはしていない。
──ということは、複数名のドライバーがすでにシミュレーターを経験したという事ですか?
AR:そのとおり。複数名のワークスドライバーがシミュレーターを数多くドライブし、そのフィードバックを開発陣が詳細にデータ化している。シミュレーターのためにシートも専用に用意しているし、ハンドリングも可能な限り実車に近い状態で行っている。過去にさまざまなカテゴリをドライブして彼らだけに、その経験値から多くのフィードバックを得ている。
──BMWモータースポーツで育成しているジュニアドライバーは、ニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)でポールポジションを獲得したり、総合優勝をしたりと、ニュルで鍛えられて大きく成長を遂げましたね。たとえば彼らにもLMDhをドライブするチャンスはあるのでしょうか?
AR:今年のニュル24時間レースでは残念ながら不運だったけれど、彼らのレーシングドライバーとしての成長は目を見張るものがある。もちろん、彼らにもLMDhをドライブする機会を与える可能性は充分に考えられる。
ただ、LMDhプロジェクト始動1年目にそのチャンスがあるのかは、まだ分からない。M240iから始まり、M4 GT4を経て昨年からはGT3へスイッチし、今年の前半まではニュル耐久シリーズで徹底的に鍛え上げ、平行して今季はGTワールドチャレンジ・ヨーロッパのエンデュランスに参戦し、ニュルからヨーロッパの主要サーキットへとその修行の場を移して、更なる鍛錬に励んでいるところなので、彼らの今後の成長とポテンシャルに期待している。
17歳前後のまだティーンエイジャーだった彼らを、親元から預かってニュルで共同生活をしながら、いまも毎日育成生活が続いている。長い目で見て育成をしているので、BMWとしては育成ドライバーがトップカテゴリーで世界に通用するドライバーになってくれることを強く望んでいる。
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